日本流・ブラックフライデーに想う
2025年12月03日
久しぶりに、記憶の片隅にあった言葉を目にした。それは、約10年前に、米国発祥のセールイベント、ブラックフライデーを模倣し、日本で民間や政府が音頭を取った“プレミアムフライデー”である(※1)。月末の金曜日に、普段より少し贅沢な時間を過ごせるように、買い物や食事、観光などの消費喚起策を講じたり、早帰りやノー残業デーといった働き方を工夫して余暇の時間を作ったりするという官民連携の取組みであった。2016年度にはプレミアムフライデー推進協議会が設立され、全国的・継続的なムーブになるようにスタートした。今振り返れば、ささやかなご褒美だったかもしれないが、いつの間にか“プレミアムフライデー”という言葉は耳にしなくなった。
11月下旬、久しぶりに目にしたと思ったら、プレミアムフライデー推進協議会と類似のHPがあるが、一切関係がなく、セキュリティリスクがあるためアクセスしないようにと、経済産業省が注意喚起したというニュースだった(※2)。とても今どきのニュースだと感じたが、元々の“プレミアムフライデー”に関する情報発信を担った同協議会のサイトは既に2023年6月に閉鎖されていたことも、その時に知った。
一方、日本でも多くの小売業者がブラックフライデーを掲げ、大幅値引きによって消費者の購買意欲を刺激するセールを実施している。中には、今年で10周年とアピールする企業も見られ、長期間継続している習慣になっていることが窺われる。その意味では、日本独自の“プレミアムフライデー”という名称・取組みは霧散したが、本来の消費促進を目的とした“ブラックフライデー”が定着しつつあるといえよう。
ブラックフライデーを参考にした取組みが顕在化した際に何度かメディアの取材を受けたが、既に様々なセール商戦が存在する中で新たなキャンペーンが立ち上げられても、肝心の賃金や所得が増えなければ消費者は踊らないだろうという、なんとも平凡な回答をした記憶がある。それから約10年が経過し、大卒初任給は約2割上昇し、株価は約3倍に膨らんでいる。
もっとも、本場米国のブラックフライデーは、祝日であるサンクスギビングデー(11月の第4木曜日)の翌日の金曜日(2025年は11月28日に当たる)を指すにもかかわらず、日本では、フライデー(金曜日)とは無関係に、主に11月下旬にセールが実施されている。しかも、小売各社で開始時期や期間はまちまちであり、中には11月28日よりも前に終了してしまうセールも散見される。つまり、名前由来のブラック(黒)を強調した広告宣伝は多いものの、名称の後半部分“フライデー”はほとんど意味を持っていない(一部の小売では、“フライ”デーとして揚げ物にフォーカスし、ネーミングの妙も見られ、それはそれで一興)。それ故、広告でブラックフライデーが連呼されるたびに、違和感を覚えてしまう。
今さら規格を統一しようとしても、“プレミアムフライデー”の二の舞になるかもしれず、上から音頭を取るよりも民間の自主性に委ねた方がうまくいくように思われる。この混沌とした状況こそが、日本流というところか。
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政策調査部
政策調査部長 近藤 智也
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