2025年02月26日
年々増える死亡数に紛れてわかりにくくなっているが、地方の人口減少のボトルネックは今も昔も若者の流出だ。同じ場所で10代前半を過ごした同世代が、年齢を重ねるにつれどれほど残っているかを5年おきに辿った(図)。若者の流出に悩む地方36県をみると20代前半で2割減となっている。以前は20代後半に若干の戻りがあったが、75年以降に生まれた世代から地方に戻ってこなくなった。
これとは逆に、1都3県は20代前半に急増する。以前は大学卒業の次の年代の20代後半にいったん減少していたが、80年代生まれの世代から20代後半以降も増え続けている。興味深いのは学生街を擁する宮城と京都だ。20歳前半に急増するのは1都3県と同じだが20歳後半に急減し、元々いた10代前半の水準をも下回る。進学で流入しても、卒業とともに流出してしまうのだ。東京一極集中の要因に大学の集中を挙げる説もあるが、きっかけではあれ、本質的には就職先を求めての東京一極集中であることが見て取れる。
その背景は何か。1つは大学進学率の上昇に伴いホワイトカラー志向が高まったことだ。特に、2020年の20代後半はその4分の1が専門職(※1)に従事している。代わりに、かつて団塊世代が担っていた、工場や建設現場で働く現業職(※2)への就職が減った。もう1つは、医療や教育以外の専門職が東京に偏っていることだ。大企業のオフィスワーカーも東京に集まっている。戦前の小津作品ではないが、『大学は出たけれど』、それにふさわしい(と彼らが考える)就職先が地方には少ないのだ。
よって、「若者や女性に選ばれる地方」をつくるとは、専門職(医療・教育以外)やオフィスワーカーが活躍できる場所をつくることにほかならない。法務職、会計職、経営支援、エンジニア、デザイン等々、資格や感性を強みに高収入を稼ぐ職種とも言える。もっとも、この手の職種が東京に偏るのは、東京ならではの「集積の利益」があるからだ。専門性が高くなるほどニーズは限定され、母数となるマーケットが大きくないとビジネスとして成立しない。多様な専門職が生き残るには一定の都市規模が必要だ。高い山ほど裾野が広い。
25年後に目をやると、地方は基礎的なコミュニティ機能の維持さえ難しい。1都3県を除けば、25~54歳の現役世代が約3割減る。そして高齢者の数はさほど変わらない。医療介護の需要が減らぬまま、財源と人手は約3割減るということだ。65歳以上が過半となった集落を限界集落と言うが、自治体レベルで65歳以上が過半の「限界自治体」は25年後の2050年には557となる見込みだ(※3)。全自治体の約3分の1である。
過疎化は慢性期でも終盤に近い。農林漁業や地場製造業を観光業でけん引する類の積極策を選択する余地はある。とはいえこれが若者を引き留めるレベルで成功するのは、相当の地域資源に恵まれたところに限られる。成功パターンはあっても、結局プレイヤー次第なので必勝パターンになりえない。役所でさえ退職補充がままならない時代だ。将来策を打とうにも目の前の業務で手一杯なケースもある。住民の苦痛なく町を畳む選択を迫られる限界自治体も出てこよう。
そう考えると、若者を引き留め地方の存続を図る最善手は(地方の)都市創生ではなかろうか。津々浦々まんべんなく蘇生するばかりが地方創生ではない。財源と人手の3割減にかかる危機意識を共有し、ある種の開き直りをもって東京の代替都市を創生することである。一極集中と多極分散の間を取った「寡極分散」だが、東京をバックアップするほどに強化された地方都市ができれば災害時の事業継続にも資するだろう。また、若者や女性に忌避される前時代的、家父長的な思い込みを解消し、「楽しい地方」にするのも都市創生だ。古人いわく「都市の空気は自由にする」。
(※1)職業大分類の「専門的・技術的職業従事者」
(※2)同じく、「農林漁業従事者」、「サービス職業従事者」、「生産工程従事者」、「輸送・機械運転従事者」、「建設・採掘従事者」、「運搬・清掃・包装等従事者」
(※3)国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」を元に集計
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- 執筆者紹介
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政策調査部
主任研究員 鈴木 文彦
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