サマリー
◆地方の人口減少について、転出超過つまり社会減が2000年代半ばをピークに一服しており、死亡数の増加による自然減が主な要因のように一見思える。とはいえ、経緯を辿れば出生数の減少が大きく、また、国外からの転入を除けば転出超過に歯止めがかかっていないことがわかる。対して、東京(1都3県)の人口増加は転入超過が主な要因だが、2010年代までは出生数も一定水準を保っていた。10年ほど前から東京も自然減に転じたが、代わりに国外からの転入超過が増加要因になった。
◆地方の出生数の減少の背後に若年層の流出が推測される。検証のため10~14歳を起点にライフサイクルを辿ると、20代前半に流出しその後戻らない流出入パターンがうかがえ、この傾向は世代が下るごとに強まっている。流出する年代から就職流動が本質的な要因と考えられる。全体的に現業職の割合が低下し専門職の割合が上昇する中、特に情報通信業が集積する東京に若年層が集まった。職種構成を見ると大都市圏に専門職、地方には現業職の割合が高い。
◆要因からは、東京一極集中に歯止めをかける策として情報通信業をはじめとする専門職の地方分散が考えられる。他方、提供する商品やサービスが高度かつ複雑、細分化するほど市場は小さくなるという、大都市圏に専門職が集中する事情もある。ついては、集積の利益に対するリスク、例えば防災の観点から地方分散を主導することが重要だ。地方立地の不利を緩和すべく通信環境の品質向上を進める策もある。抜本策として、東京を代替可能なレベルで地方の大都市圏を充実強化する地域再編も考えられる。
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