内向型人材の強み

-性質を理解した人材活用に向けて-

RSS

2023年10月04日

  • マネジメントコンサルティング部 主席コンサルタント 元秋 京子

様々な場において、社交的な外向型人材は魅力的かつ目立つ存在にみえる。一方で、深い洞察力に富む内向型人材もチーム内には欠かせない。

最近、人の性質と組合せによる効果についての書籍を読む機会があった(※1、2)。それによれば、米国人の3分の1または2分の1は内向型人材らしい。多くの米国人は外向型だろうと感じていただけに驚きを禁じ得ない。

カール・ユングによれば、内向型人材は内省的で自己分析を好み、内部の感情や思考に重点を置く一方、外向型人材は社交的で人との関わりを好み、外部の刺激や活動に重点を置く。ただし、人はいずれかのタイプに完全に分類されるわけではないとされる。

一般的に、性質には先天的側面と後天的側面があるとされる。また、人は外向型・内向型の両方の性質を有し、その表面的な見え方は、どちらがより優勢であるかの違いに過ぎない。自分自身が内向型であることを強く認識した上で、外向型の要素を後から意識的に取り入れてきたといったケースも少なくない。

有能なリーダーには内向型人材も数多い。特に環境変化が激しい昨今、深い洞察力と傾聴力を活かして様々な情報を得ていくリーダーが求められている。ペンシルヴェニア大学のウォートンスクールのアダム・グラント教授は、外向型リーダーは部下が受動的なタイプの際に集団的なパフォーマンスを向上させる一方、内向型リーダーは部下がイニシアチブを取る能動的なタイプである際により効果的であるとの仮説をたて、研究を実施している。内向型リーダーは、他人の話に耳を傾け、社会的地位の独占にこだわらないことから、関係性の中に能動的な循環を作り、部下に無理なくイニシアチブを取らせることができるとする。

また、外向型人材だけで構成されたチームのパフォーマンスが良いとは限らず、むしろ内向型・外向型の両方で構成されることが効果的であることが多くの研究によって実証されている。補完関係にある多様なキャラクターが強靭なチームを実現する。このことは、コンサルティングにおけるチーム組成にも当てはまる。

いずれにせよ、自身の性質を理解し弱い部分を補強しつつ、その性質ならではの強みを活かした行動・働き方を実行に移すことが肝要であろう。異なる性質の良い部分を取り入れることはあっても、自分自身とそれとを比較して劣等感を抱く必要は全くない。同書(※1)の「本当の自分を見失わずに、自分らしくあること」とのメッセージを大事にしたい。

画一的な理想像や自分自身の考え方・やり方を基準とせず、各人の性質・個性・成長スピードにより、チームの組合せを考えることがマネジメント層には求められている。

(※1)『静かな人」の戦略書』(ジル・チャン著)、ダイヤモンド社、2022年
(※2)『内向型人間のすごい力』(スーザン・ケイン著)、講談社、2015年

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者紹介

マネジメントコンサルティング部

主席コンサルタント 元秋 京子