金融リテラシーの講座をいかに効果的に提供すべきか

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2023年09月13日

昨年11月に公表された「資産所得倍増プラン」は、資産形成支援に関する施策を国全体として推進すべく、国家戦略としての「基本的な方針」を策定するとしている。今後、基本的な方針の策定を盛り込んだ法案がこの秋の国会で可決されれば、早ければ年内にも金融審議会でその内容について審議が開始されるだろう。

その方向性を占う上で参考になるのが、2020年10月の経済協力開発機構(OECD)による「金融リテラシーに関するOECD理事会勧告」である。勧告では、金融リテラシーに関する国内のニーズと課題を特定した上で、目標達成に向けたロードマップを作成し、その進捗状況をモニタリングし評価する「国家戦略」の策定を求めている。

OECDの勧告は、金融リテラシーに関する講座等のプログラムをいかに効果的に提供するかについても勧告を行っており、啓発キャンペーン、ガイダンスなど様々なルートで提供することを求めている。また、無関心層にはゲームやドラマなどのエンターテインメントを活用することが有益であると指摘している。

このようなプログラムは、単に国民の金融に関する知識を向上させるだけでなく、実際の行動につなげることが重要である。この点について勧告では、プログラムが効果的に伝わるよう、結婚、妊娠、就職、転職、退職など、教育効果の高いタイミングで提供することを勧告している。このような個人の経済的状況が変化するタイミングであれば、今後の家計について改めて考えるだろう。このようなタイミングでプログラムが提供されれば、資産形成が自分事として意識され、実際の行動に結びつきやすいのではないだろうか。

勧告はほかにも、家計の状況を理解するための分かりやすい情報やツールを提供することを求めており、例えば、個人に年金受給額に関する情報の提供が挙げられている。我が国でも、昨年から「公的年金シミュレーター」が提供され、将来の年金受給額を簡便に試算できるようになっている。「公的年金シミュレーター」に関して、資産所得倍増プランでは、「民間サービスとの連携を進展させることにより、民間事業者が運営するアプリ等で、簡便に自身の保有する金融資産や将来の年金受給見込み額を参照できるように」なるとしている。このように自身の金融資産や将来の年金受給見込み額が分かれば、現役時代に確保すべき金融資産額が分かるようになる。

このような様々な取り組みを通じて、各人が資産形成に関する問題を自分事としてとらえ、実際に行動に移すようになることが期待される。

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執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 金本 悠希