SFDRレベル2、監督当局によるQ&Aの更新、ミスリーディングな表記あり?
2022年12月07日
EUのサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)(※1)は、2023年1月より、レベル2(細則)の適用が開始される。
その直前ともいえる、本年11月17日、EUの銀行・証券・保険の監督当局は、SFDRレベル2のQ&Aを更新している(※2)。
本稿では、このQ&Aの一部について、筆者の「違和感」を共有したい。
Q&Aのp.26には、商品レベルの「契約前開示」・「定期報告」における、EUタクソノミー(※3)との整合性判定のためのディシジョンツリーが示されている。
このディシジョンツリーによると、「8条ファンド」(ライトグリーン・ファンド)(※4)のうち‘E’(環境)の促進をもたらすものについては、「9条ファンド」(ダークグリーン・ファンド)(※4)のうち‘E’促進目的を有するものと同じ経路でEUタクソノミーとの整合性判定をすることとされている。
しかし、この表記の仕方については、違和感がある。
8条ファンドは、「サステナブル投資」(※4)を一切含まないものと、それを一部含むものに大別される(本稿では、便宜上、後者を「8条ファンド+」と呼ぶ)。このうち、EUタクソノミーとの整合性についての開示が求められるのは、「8条ファンド+」に限られるものと考えられる(※4)。
ディシジョンツリーにおける8条ファンドの表記の仕方では、「8条ファンド+」についてのみ求められるべき検討を、8条ファンド全般に求めているような印象を与えている。
同じような違和感が、Q&Aのpp.27-28の表にもある。
この表のうち、‘Article 8 SFDR product not affected by Article 6 TR’(p.28)という区分は、「サステナブル投資」(※4)を含まない8条ファンド、すなわち「8条ファンド+」に該当しない8条ファンドを意味するはずである。
それにもかかわらず、その区分の内訳には、‘Existing product promoting exclusively social characteristics with no intention to change strategy’、すなわち、‘S’(社会)の促進をもたらす8条ファンド、としか記載されていない。本来であれば、‘E’の促進をもたらす8条ファンドもここに記載されているべきである。
そのため、この区分は、‘E’の促進をもたらす8条ファンドはすべて「8条ファンド+」に該当するような印象を与えている。
とはいえ、全34ページあるQ&Aのうち、たとえば、p.16のIII.Q1や、p.24のV.Q8に対する回答を読めば、これらの違和感は解消されるはずである。関係者のみなさまには、是非、Q&Aの一部だけを見て誤解をされないようにお願いしたい。
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- 執筆者紹介
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ニューヨークリサーチセンター
主任研究員(NY駐在) 鈴木 利光
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