サマリー
◆ユーロ圏経済にとって最大のリスク要因であった米国の追加関税に関して、EUに対する相互関税率を15%にすることで米国とEUは合意した。追加関税が課される以上、手放しで喜べる内容ではないが、関税率の引き上げ幅が7月12日に米国からの書簡で提示されたものより小幅に留まったことは安心材料といえる。また、更なる関税率引き上げの可能性が低下し、先行きの不確実性が大きく低下したことは、製造業を中心に企業マインドに一定程度のプラスの効果をもたらすと期待される。
◆米国との合意では、EU側の譲歩として、①米国からのエネルギー輸入を3年間で7,500億ドル増やすこと、②3年間で6,000億ドルの対米投資、が盛り込まれたが、これらの実現は容易ではないとみられる。エネルギー輸入や投資の意思決定はEU域内の民間企業に委ねられるとみられ、EUはこれに対して強制力を持たない。合意が対米貿易、投資を劇的に変化させる可能性は低く、ユーロ圏経済に大きな影響を与えるものではないと考えられる。一方、合意内容をEUが十分に履行できていないと米国が判断した場合に、米国がEUに対する批判を強めるリスクには注意が必要である。
◆ECBは7月の理事会で1年ぶりに政策金利を据え置き、これまで7会合連続で続けてきた利下げを一時停止した。ラガルド総裁は会見で、EU・米国間の通商を巡る緊張関係が解消されれば、不確実性の緩和によって経済見通しが改善すると述べており、EUと米国の通商協議の合意により、ECBは次回9月の理事会でも様子見姿勢となる可能性が高まった。
◆BOEは8月の金融政策委員会で、2会合ぶりとなる0.25%ptの利下げを実施した。もっとも、決定にあたっての投票では、9名の参加者中4名が金利の据え置きを主張し、BOE内部での意見対立が明らかとなった。英国では労働需給の緩和傾向が続く反面、インフレ率の高止まりリスクが再び高まっており、政策判断はこれまで以上に困難さを増している。
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