米国経済見通し 景気下振れの懸念強まる

雇用環境が悪化傾向を示す中、屋台骨の個人消費は楽観しづらい

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2025年08月22日

  • 経済調査部 主任研究員 矢作 大祐
  • ニューヨークリサーチセンター 研究員(NY駐在) 藤原 翼

サマリー

◆7月の雇用統計が弱い結果となったことで、景気の下振れ懸念は強まっている。雇用環境の悪化を警戒させる主因となった非農業部門雇用者数の伸び悩みは、不法移民の流入減による影響も想定される。しかし、若年層の就業率の低下など、他の指標でも、雇用環境の悪化傾向は見られる。雇用環境が悪化すれば、家計の雇用者報酬が伸び悩む可能性があることから、米国経済の屋台骨である個人消費は楽観しづらい状況が続くと考えられる。

◆景気の下支え策として、財政・金融政策が注目される。財政政策に関しては、7月4日にトランプ減税2.0が成立した。しかしながら、税還付のタイミングなどを考慮すれば、家計に対する押し上げ効果は2026年以降に本格化することが想定される。

◆当面の景気の下支え策としては、FRBによる利下げが期待されよう。7月の雇用統計を受けて、複数のFOMC参加者が雇用環境の悪化リスクを懸念していることから、9月16・17日のFOMCを含め、近い将来における利下げの検討が想定される。2025年1月以降、FRBがFF金利を据え置き、様子見姿勢を続ける中で、利下げの再開は米国経済にとって安心材料となろう。他方で、PPIや期待インフレ率の上昇に見られるように、インフレ再加速リスクは根強い。FRBが利下げを再開するとしても、大幅利下げや継続的な利下げというよりは、漸進的な実施が想定されよう。

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