マイナ保険証が問いかけるデジタル化の必要性
2025年08月22日
先日、病院を訪れた際、受付でマイナ保険証をリーダーにかざすと、医療情報の提供に関する選択画面が表示された。普段は深く考えず「全て同意」を選んでしまっていたが、最近のマイナ保険証の報道もあり、「個別に同意する」では何が選択できるのか気になった。調べると、手術情報、診察・薬の履歴、特定健診(健康診断等)の提供可否を選択できることが分かった。これらの情報や過去の提供履歴は「マイナポータル」で確認できることも知り、データの透明性に少し安心した。
2025年12月2日から、マイナ保険証の利用が原則義務化される。これに先立ち、後期高齢者医療制度の加入者の健康保険証が同年7月末で有効期限を迎えるなど、既に切り替えが始まっている。マイナ保険証の利用登録を行っていない方(利用が困難な方も含む)には「資格確認書」が交付されるが、制度の原則義務化を目前に控えても、約3人に1人が未登録(※1)のままだ。
厚生労働省は、マイナ保険証の利点として「データに基づくより良い医療が受けられる」や「手続きなしで高額療養費の限度額を超える支払が免除される」などを挙げている(※2)。個人的には、救急搬送時の応急処置や病院選定、災害時の医療提供など、緊急時に情報共有の即時性が活きる仕組みだと感じる。また、少子高齢化による労働力人口の減少が進む中、医療現場や行政の事務負担を軽減し、限られた人材で制度を維持するためにも、医療DXの基盤としてのマイナ保険証の役割はますます重要になってくるだろう。
とはいえ、課題もある。マイナンバーカードのICチップに記録された電子証明書には5年の有効期限があり、マイナポイント第1弾あたりでマイナンバーカードを取得した人々は、そろそろ更新時期を迎える。失効後も3か月間は保険資格情報の利用が可能とはいえ、制度の理解や更新手続きの周知が十分とはいえない(※3)。さらに、2025年9月からはスマートフォンへのマイナ保険証搭載も開始される予定だが、医療機関側の対応状況はまだ見えづらく、現場での混乱も懸念される(※4)。
新しい仕組みの導入には、常に混乱や不安が伴う。それでも、今後の医療の質や効率を高めるためには、デジタル化の推進は避けて通れないだろう。利用者として、まずは制度を正しく理解し、自分に関係する仕組みを知ることが、安心して使いこなすための第一歩になるに違いない。制度の利点と課題を見極めながら、あまり批判的になりすぎず、全体像を落ち着いて捉える姿勢が求められる。
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- 執筆者紹介
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経済調査部
主任研究員 田邉 美穂
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