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ウクライナがEU加盟だけを希求していたら、プーチン大統領は手を出さなかったか?

2022年06月29日

経済調査部 シニアエコノミスト 近藤 智也

6月23日、EU首脳会議は、ウクライナに加盟候補国の地位を付与することで合意した。ウクライナのNATO加盟を求める態度に憤り、それを阻止せんがために侵略を開始し、世界を巻き込む一連の危機を引き起こしているロシアのプーチン大統領だから、今回のEUの決定にさぞかし怒り心頭かと思ったら、報道によると、EU加盟には反対していないとし、ウクライナの勝手と我関せずの立場を表明したという。EUは経済的・政治的な集まりであり、ロシアにとって軍事的脅威ではないというのが理由の一つのようだ。また、たとえ加盟候補国になっても、正式に加盟できるまでにはまだ相当なプロセス・時間がかかる、最終的には全加盟国の承認が必要でどこかが渋るであろう、それ故慌てていないとも考えられる。そもそも、プーチン大統領は目的を達するまでウクライナへの“特別軍事作戦”をやめない姿勢であり、それが成功すれば、EU加盟申請なんて無意味になる、ご破算にすればいいと高をくくっているのかもしれない。

ただ、EUはNATOのような軍事的な組織ではないにしても、純粋な「経済的仲良しクラブ」でないことも明白だろう。実際、ウクライナを支援し、ロシアに対しては経済制裁を実施している。経済的な力を持ち(人口:4.5億人、名目GDP:世界の2割弱)、環境問題等の国際ルール作りに影響力を及ぼし、経済安全保障の分野を含めて政治的意思決定を行う地域連合であると解釈できる。また、スウェーデンとフィンランドがNATOに加盟すれば、EU加盟国のうち、オーストリアとアイルランド、キプロス、マルタの4ヵ国を除く23ヵ国がNATOメンバーと重複する。

確かに、先に加盟候補国となっているトルコやバルカン諸国は何年も待たされている。特に、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟に難色を示してきたトルコは、交渉開始から現在まで17年近く経過しているが(加盟申請から約35年、加盟候補国になってから約23年が経過)、EU加盟の目途は立っていない。原加盟国(6ヵ国)を除く、現在のEU加盟国で見ると、加盟交渉開始から実際に加盟するまでに要した期間は平均で5年、最長はクロアチアの8年弱である(但し、クロアチアの場合、EU内の構造改革に時間を要した)。また、2000年代以降に加盟した13ヵ国に限ると、加盟申請から加盟まで平均で約10年かかった。従って、プーチン大統領が悠長に構えていても問題ないのかもしれない。

ただ、プーチン大統領がウクライナに対して始めた「博打」の結果、フィンランドやスウェーデンのNATO加盟、そしてウクライナやモルドバ、ジョージアといった旧ソ連諸国のEU加盟候補国入りを招いたとしたら、あれほど西側諸国の東方拡大に神経をとがらせていたプーチン大統領は勝負に勝ったといえるのだろうか。

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