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日本経済はウクライナ危機・感染拡大の下で「悪い円安」に直面

2022年04月21日

経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司

日米金融政策の方向性の違いなどを反映し、円安ドル高が進んでいる。2022年初に115円/ドル台だったドル円レートは本稿執筆時点で一時129円/ドル台に乗せた。こうした中で関心が高まっているのが、円安による日本経済への影響だ。

振り返ると、ドル円レートは2007年の124円/ドルから2011年の75円/ドルの史上最高値まで、約4年間で50円近くも急騰した。東日本大震災後の日本企業が直面した「6重苦」の1つと指摘されていた円高が現在は解消したのだから、日本経済にとって円安はプラスであると評価すべきかもしれない。

日本銀行が2022年1月に公表した展望レポートでは、「近年の経済構造の変化を考慮しても、円安は引き続き、全体としてみれば、わが国の景気にプラスの影響を及ぼす」と述べられている。筆者らが行った推計でも同様の結論を得ている(※1)。円安が日本経済にプラスの影響を及ぼす主な経路は、輸出金額や対外投資による純受取額が円換算値で増加し、国内企業収益の増加を通じて設備投資などが拡大し、幅広い業種に経済効果が波及するというものである。また、サービス輸出に含まれる訪日外国人観光客(インバウンド)の消費は2010年代に急増したが、円安はインバウンド消費を押し上げる効果を持つ。

しかしながら、円安がもたらすプラスの影響はウクライナ危機と新型コロナウイルス感染症の拡大によって発現しにくくなった。先行き不透明感が強い中では、企業は収益が増加しても設備投資の拡大などに消極的になりやすい。感染状況が十分に落ち着かなければ、インバウンドの受け入れを再開することはできない。こうした状況下で円安が進むと、輸入コストの上昇というマイナスの影響ばかり表れてしまう。

加えて、今回の円安は急速に進んでいる。企業などの対応が追い付かないスピードで為替レートが変化すれば、円安であっても円高であっても非効率が発生してコストがかかるため、日本経済にマイナスの影響を及ぼす。

これらを踏まえると、足元で進む円安はマイナスの影響がプラスのそれを上回る「悪い円安」といえる。もちろん、ウクライナ危機と感染拡大が収束すれば「良い円安」へと転じるだろう。円安の影響を検討する際は、為替レートの水準や変化のスピードに注目するだけでなく、日本経済を取り巻く環境を考慮することも重要だ。

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