サマリー
◆新型コロナウイルスのオミクロン株の流行により、国内の感染状況は急速に悪化している。これを受け、政府は東京など13都県にまん延防止等重点措置を適用した。1月21日から2月末までの全国の人出が2021年8、9月平均並みに減少すると、2022年1-3月期の経済損失は▲2.4兆円に上る。こうした試算などを踏まえ、2021年度の実質GDP成長率見通しを前回予測の+3.1%から+2.4%に下方修正した。
◆円安で輸出数量が増加して貿易収支が改善するという「Jカーブ効果」は、2010年代以降は表れにくくなった。一方、為替レートが変化しても企業は輸出価格を据え置こうとする動きが広がったことで、円安局面では企業の為替差益が拡大しやすくなった。加えて、企業の海外進出等を背景に、所得収支の改善効果も高まった。円安によるマイナス面としては交易条件の悪化が挙げられるが、マクロで見ればその影響はごくわずかである。もっとも、中小企業非製造業では円安による悪影響が増大している。さらに、消費財の輸入品ウエイトの上昇で、家計の購買力は円安時に低下しやすくなった。
◆こうした円安によるプラスとマイナスの両面の影響を踏まえつつ、マクロモデルを用いて試算すると、円安は日本経済にプラスの効果をもたらすが、以前に比べて効果は縮小したと考えられる。企業収益への影響を直接効果と波及効果に分けて見ると、大企業製造業では直接効果による収益の押し上げ額が大きい一方、非製造業は収益が減少する。ただし波及効果を踏まえれば、非製造業においても円安は収益に対してプラスに働くとみられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
主要国経済Outlook 2025年5月号(No.462)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2025年04月24日
-
「相互関税」騒動と日本の選択
2025年04月24日
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日