サマリー
◆米国では、全体の約6割の世帯が株式を保有しているが、その多くは退職貯蓄制度等を通じた間接保有であり、株式市場における存在感は大きい。退職貯蓄制度として普及する401(k)プランの加入者全体の資産構成を見ると、約7割が株式に投資されている。特に、20、30歳代の株式比率は他の年齢層と比べて約9割と高く、若年層の間接的な株式保有が増えている。
◆要因の一つがターゲット・デート・ファンド(TDF)への配分比率の高さだ。TDFはライフサイクルに応じて変化する投資家のリスク許容度に合わせて、ファンドの資産配分を自動的に調整する仕組みで、一般的に若年期は株式の配分比率が高い。米国では、自ら運用指図を行わない加入者も一定のリスクを取った運用を実践できるよう、401(k)プランの自動加入化に際しTDFの導入を政策的に促してきた。その結果、若年層のTDFへの配分比率が高まり株式比率は上昇したと考えられる。
◆これにより、米国では若年層の金融資産額が増加し、退職貯蓄制度以外の形での株式投資の実践が広がった可能性が高く、TDF導入の効果が表れていると言える。日本のDCでも、指定運用方法にTDF等のバランス型ファンドを設定する動きは広がりつつあるが、未だ多くは元本確保型商品を導入している。政府は、国民の安定的な資産形成の促進に向けてDCのさらなる普及を目指しており、事業主へ指定運用方法などの見直しを促すことを具体策に挙げている。米国の現状は、大いに参考となろう。
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