コロナ融資の出口戦略

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2022年03月08日

新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は依然高い水準だが、徐々に減少している。そのような中、2月には政府の分科会の尾身会長が出口戦略を議論すべきと指摘した。また、2月には海外ではイギリスで出口戦略が発表された。

筆者は感染症対策の専門家ではないため、感染症対策の出口戦略についてコメントすべき立場にはない。ただ、新型コロナウイルス感染症については、経済的な面でも出口戦略を検討する必要があり、とりわけ、巨額に積みあがった事業者のコロナ関連融資をどのように解消するか検討を急ぐ必要がある。

感染拡大と緊急事態宣言等による人流抑制により様々な業種の事業者が打撃を受けたため、2020年に資金繰り対策としていわゆるゼロゼロ融資が導入された。ゼロゼロ融資とは、主に中小企業向けの政府系金融機関と民間金融機関からの融資について、事業者に代わって公的機関が3年間利子を負担し、最長5年間元金の返済を猶予する、実質無利子・無担保融資のことである。

ゼロゼロ融資や各種給付金による支援の結果、2021年の倒産件数は歴史的な低水準に抑えられた一方、事業者の債務が膨れ上がっている。ゼロゼロ融資(コロナ関連融資)の額は、2021年4月末時点で、民間金融機関で35.5兆円、政府系金融機関で20.9兆円に上っている。

ゼロゼロ融資は、元金の返済が猶予される据置期間を1年~2年に設定しているケースが多い模様である。多くの事業者は今年から元金の返済が開始されることになるが、オミクロン株による感染再拡大もあり、依然経営環境が厳しく返済が困難な者も出てくるだろう。

ゼロゼロ融資は、感染症の拡大という一種の災害に対する緊急経済対策として行われたため、コロナ禍以前から経営が厳しかった事業者も延命している可能性がある。逆に、以前は良好な経営状態だったが、コロナ禍による長期的な需要の変化などから、今後経営が厳しくなる事業者も出てくる可能性がある。

そのため、事業者の一部は淘汰が避けられないだろうが、地域金融機関としては、自らの経営基盤である地方経済を守る努力が必要であろう。金融機関には債務返済が困難な事業者のうち存続可能な者に対して、経営改善や事業再生を支援する取り組みが求められる。

ただし、民間金融機関によるゼロゼロ融資は、信用保証協会が債務の全額または80%を保証しリスクを負担しているため、債務者の再建について、民間金融機関にどのように当事者意識をもって取り組ませるようにするかという課題がある。

これに関して3月4日には、全国銀行協会が事務局を務める研究会によって中小企業版の私的整理ガイドラインが策定された。弁護士や公認会計士らが「行司役」となって、経営が悪化した中小企業の再生を後押しするため、返済の猶予や債務の減免など債務整理の前提となる再生計画を評価する仕組みが設けられた。

このほか、東日本大震災時に取られた措置を参考にして、過剰債務を負った事業者に対して金融機関が保有する債権を公的機関が買い取る案も検討されている模様である。これらの枠組みも通じて、官民一体となって中小企業の過剰債務を解消する出口戦略を作り上げることが期待される。

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執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 金本 悠希