米国SPACが迎えている転換点と日本への示唆
2022年02月22日
約1年前、「米国で過熱するSPACのIPOはバブル?新常態?」(2021年2月16日)(※1)というコラムを当ウェブサイトに掲載した。2021年のSPAC(特別買収目的会社:Special Purpose Acquisition Company)のIPOは最終的に600件を超え、米国のIPO全体の約6割を占めた(図表)。しかし、2022年は2月9日時点でSPACの上場は30社と、2021年の同時期と比べると約4分の1に減少している。
SPAC以外のIPOも減少しているが、SPACの減少に関してはSPAC特有の問題が顕在化していることが背景にありそうだ。2020年以降、NikolaやLordstown Motors、Canoo、Lucid Groupなど、SPACを通じて上場を果たした企業が、SEC(米証券取引委員会)や司法省の調査を受けるケースも相次いでいる。これは投資家に説明していた業績見通しや成長戦略などが不適切であることなどが理由であり、2020年の終わりごろから、SECは一部門あるいはスタッフ見解という形式で複数の声明を公表し、SPACへの監視を強化する姿勢を示している。2021年12月には、ゲンスラー委員長が講演会で改めてSPACの情報開示強化に言及している。Acorns GrowやHeartFlowなどのように、一度はSPACによる買収・合併を合意したが、足元の市況等に鑑みて合意を白紙に戻すケースも出てきている。2021年12月にナスダックに上場したBuzzFeedは、SPACとの合併前にSPAC投資家の9割以上が償還権を行使してしまい、BuzzFeedは当初想定の1割にも満たない額しか資金調達できなかった。
SPACは米国だけでなく、カナダや欧州、韓国など広く導入されており、2021年にシンガポール、2022年1月から香港でも導入されている。国際金融センターとしての地位確立を目指す日本においても、SPACの導入は検討するべきなのだろう。しかし、導入にあたっては米国で顕在化している様々な問題点を踏まえ、投資家保護に十分に配慮しつつ、企業の円滑な資金調達に資する制度設計が求められる。
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金融調査部
主任研究員 太田 珠美
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