グリーン金融政策に銀行はどう対応すればよいのか

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2021年10月26日

世界的に気候変動に対する問題意識が高まっている。中央銀行も金融政策を通じた気候変動への対応(グリーン金融政策)に乗り出している。中央銀行がグリーン金融政策を行う理由と政策手段を整理することで、銀行がどのように対応すればよいのかヒントを探ってみよう。

そもそもなぜ中央銀行がグリーンに関心を持つのだろうか。中央銀行の目標は、簡単にいえば「お金を安心して使えるようにすること」であることが多いようだ。気候変動リスクの顕在化は、物価の安定を脅かしたり、金融仲介機能を弱めたりする可能性があるため、中央銀行にとっても懸案事項となっているのだろう。

具体的な例を考えてみよう。脱炭素の過程で、化石燃料をはじめとする一部の資源は需要・供給ともに徐々に減っていくと考えられるが、そのペースは地域や業種によってまちまちである。そのため、減少の過程で需給バランスが崩れ、物価に影響が出る恐れがある(※1)。また、銀行の貸出等についても、二酸化炭素排出量が多い業種向けの貸出残高が多い場合、銀行のバランスシートが気候変動によって毀損するリスクが高まるというふうに考えられる。

経済構造の変化が物価や金融仲介機能に及ぼす影響に対処すること自体は中央銀行にとって通常の業務である。気候変動リスクは数あるリスクの中でも長期間にわたって大きな影響を及ぼし得るという点で、グリーン金融政策という枠組みを新たに設けて対応しようとしているのだろう。

政策手段は、中央銀行自身のリスク管理を目的としたもの(プロテクティブな手段)と、金融機関や企業の気候変動対応を促進することを目的としたもの(プロアクティブな手段)に大別できる。前者としては、二酸化炭素を多く排出する企業の社債等を資産買入の対象外としたり、担保としての価値を低く見積もったりといったことが考えられる。後者としては、一部のオペレーションの参加要件として気候変動関連の情報開示を求めたり、気候変動に対応した貸出を優遇金利でバックファイナンスしたりするといった手段が考えられよう。日本銀行が導入した、「気候変動対応を支援するための資金供給オペレーション」(グリーンオペ)も後者の事例の一つである。

今後グリーン金融政策がどのような広がりを見せるかは未知数だが、銀行は、既存の貸出や自行のバランスシートがどの程度の気候変動リスクを内包しているのかを評価することが最低限必要となるだろう。その上で、気候変動に対応した設備投資や新事業といった資金需要を見つけ出すことができれば、気候変動対応を新たなビジネスチャンスに転じることが可能だろう。

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執筆者紹介

政策調査部

研究員 中村 文香