中国のオンラインゲーム規制強化への駄目出し

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2021年09月16日

中国で新興企業に対する規制強化の嵐が吹き荒れている。8月18日付けの大和総研レポート「中国:容赦のない規制強化をどうみるか」(※1)では、新興企業に対するコントロール強化と健全化の大きなうねりについて解説した。規制強化の対象の筆頭はアリババであるが、オンラインゲームのテンセントに対する規制強化には凄まじいものがある。

日本でも長時間ゲーム漬けになり、日常生活に支障が出たり、高額の課金が問題になったりしているが、中国も同様の問題を抱えている。中国の国有メディア曰く、オンラインゲームは「精神的アヘン」だそうだ。きっぱりと止めると思いきや、そうではないらしい。国家新聞出版署は8月30日に通知を発出し、18歳未満の未成年者に対してオンラインゲーム企業がサービスを提供できる時間を金曜日、土曜日、日曜日、法定祝祭日の午後8時から午後9時までの1時間に制限し、ユーザーは実名で登録しなければならない、とした。

2019年11月の国家新聞出版署の通知では、ゲーム時間は、平日は1時間半以内、休みの日は3時間以内に制限され、毎日午後10時から翌日午前8時までのサービス提供が禁止された。それでも保護者からはさらなる時間短縮の要望が高まっていたのだという。

我が家では2019年版を参考にして、平日は1時間20分以内、休日はそれを2回、遅くても夜11時までという、あまり守られることのない自主ルールを設定している。しかし、2021年バージョンにアップグレードするつもりはない。なぜ夜8時からの1時間なのか、なぜ通常の活動時間に自分の都合に合わせて遊んではいけないのか、全くわからない。夕食やら塾やら別の用事が夜8時を越えようものなら、とても恐ろしいことが起きる気がしてならない。18歳になったらたがが外れてあちらの世界にいってしまうのではないか、心配の種は尽きない。

「上に政策あれば、下に対策あり」とは、中央の政策が地方で浸透しにくい状況を表す中国の言葉であるが、習近平氏の強権の下、政策は効きすぎることが増えているように思う。そうであれば政策や通知はより現実に即したものに吟味される必要があるのだが、残念ながら今回の通知にはそれも欠けている。行きすぎた忖度は弊害でしかない。物事には多少のゆるみや余裕が必要だと思うのだが、どうであろうか。

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齋藤 尚登
執筆者紹介

経済調査部

経済調査部長 齋藤 尚登