サマリー
◆中国政府による新興企業への規制強化、締め付け強化が相次いでいる。アリババなど4大IT企業に代表される巨大化した新興企業はイノベーション、あるいは税収・雇用増加への寄与が大きく、中国共産党・政府にとっても極めて重要な存在である。このため、勃興してしばらくの間は規制なども緩く、あるいはグレーゾーンの中で、かなり自由な発展が許される。しかし、その存在が大きくなりすぎ、政府のコントロールが効きにくくなることは許されない。次の段階では様々な規制が導入され、政府によるコントロールが強化されることになる。規制強化は、これまで野放図な発展を遂げてきた新興企業に対して、健全化を促進する面はあるが、経営の自由度を抑え発展の勢いを失わせる面もある。角を矯めて牛を殺しては元も子もないのだから、いずれは政府によるコントロールと、新興企業の生存空間との兼ね合いとの落としどころを探る段階に移行していくのではないか。
◆筆者は昨今の規制強化には「少子化対策」という別のうねりがあるとみている。2020年の中国の合計特殊出生率は日本よりも低い1.3にとどまった。このことが、党中央・国務院に大きな衝撃を与えたことは想像に難くない。2015年末の一人っ子政策の廃止と二人っ子政策の導入にかかわらず、出生率が高まらないのは、住宅コストと教育コストという2大経済コストの高さが阻害要因となっている。2021年7月に発表された教育コストの引き下げ策は、新規の学習塾の設立を認めず、既存の学習塾は非営利団体に転換するなど、業界の存亡を左右する厳しい内容となっている。救いは少子化対策のための規制強化はターゲットが明確なことである。対象が次々と飛び火して拡大していく懸念は小さいのではないだろうか。
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