2021年はiDeCo加入が急増
2021年09月13日
自助努力による資産形成を後押しする制度として期待される個人型確定拠出年金(個人型DC:iDeCo(イデコ))。拙稿(※1)で2020年は新型コロナウイルス感染症拡大という逆風の中でもiDeCoの新規加入の動きが堅調であったことを指摘したが、2021年はさらにその流れが加速しているようだ。
iDeCoは、2017年1月に対象範囲が拡大されて以降、加入者数が大幅に増加した。2017年1月以降の新規加入者数は月平均で3.6万人であるが、2021年は1~7月の全ての月でこれを超えており、増加傾向が鮮明になっている(図表)。
2020年の新規加入者数は、iDeCo全体で41.0万人、うち会社員・公務員が34.8万人であったのに対し、自営業者等は4.4万人、専業主婦(夫)は1.8万人だった。自営業者等や専業主婦(夫)の利用が会社員・公務員と比べて少ない理由には、自営業者等は国民年金基金なども利用できること、所得が少ない専業主婦(夫)はiDeCoの掛金が所得控除となる税制上のメリットを享受しにくいことなどが挙げられる。
ところが、最近は、これまで低調だった自営業者等や専業主婦(夫)の新規加入に変化が見られる。2020年も前年からの伸び率で見れば自営業者等が11%増、専業主婦(夫)が26%増と、iDeCo全体の5%増を大きく上回った。2021年はさらにペースが加速し、2021年7月分の新規加入者数は、前年同月比でそれぞれ67%増、82%増と伸びが目立っている(iDeCo全体は49%増)。
加入者が増えている理由の一つは、2020年以降の株高を背景に、投資信託で運用するiDeCoの魅力やメリットに関する理解が広がってきたということではないか。例えば株高で資産が増えた加入者や、非課税である運用益の再投資による複利効果を実感できた加入者の口コミなどが、iDeCoの利用を促すきっかけとなっているかもしれない。
加えて、新型コロナウイルス感染症拡大による老後への不安増大や不確実性の高まりが、資産形成に関する人々の行動を変化させている可能性もある。仕事や収入が不安定で目先の生活資金が必要となれば、60歳まで資産を引き出せないiDeCoの利用は考えにくい。しかし、厳しい状況だからこそ、消費を手控えた分、将来に備えようという意識を持つ人々が行動を起こしたとは考えられないだろうか。
日本は、家計部門が持つ金融資産を、人々の生活や社会を豊かにするために活用する余地が非常に大きい。資産形成への意識が高まりつつある流れを停滞させてはならないだろう。iDeCoは2022年5月から加入可能年齢が引き上げられ、同年10月からは企業型DC加入者のiDeCo加入要件が緩和されるなどの制度改正が控える。自助による資産形成が、より多くの人々に広がることが望まれる。
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- 執筆者紹介
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政策調査部
研究員 佐川 あぐり
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