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ファイアーウォール規制の見直しで求められる顧客保護の視点

2021年09月07日

金融調査部 主任研究員 金本 悠希

2021年6月、金融審議会市場制度ワーキング・グループ(市場制度WG)が、ファイアーウォール規制の見直しを提言する報告書を公表した。

ファイアーウォール規制は、同一グループ内の銀行と証券会社間の顧客情報の共有を原則として禁止する規制等からなる。情報共有規制により、例えば、証券会社の顧客企業の情報がグループ内の銀行に共有されることを通じて、銀行が企業に「グループの証券会社に株式の引受業務を行わせてくれれば貸出を行う」と伝えるような、抱き合わせ販売が防止される。

情報共有規制の下で法人顧客の情報を共有する場合、事前に顧客の同意を得る方法に加えて、予め顧客に情報を共有する旨を通知した上で顧客が共有を望まない場合は情報提供の停止を求める機会を提供することで、同意を得たとみなす方法(オプトアウト)も認められる。

この情報共有規制について、2020年9月に金融担当大臣より諮問がなされ、市場制度WGで検討が行われた。情報共有規制に対しては、欧米にはない過剰な規制である、顧客に対する総合的な金融サービスの提案を阻害しているといった指摘があった。オプトアウトについては、顧客に対する説明事項が多い等、負担や利便性の観点から必ずしも積極的に活用されていない、といった指摘があった。

一方で、規制を撤廃した場合について、銀行の優越的な立場による弊害など、顧客保護に関する懸念が示された。実際、事業法人へのヒアリングによると、情報共有を拒否できるような法令上の仕組みの維持を求める事業法人が多数存在した。

検討の結果、市場制度WGは、上場企業(グループ)等について、現行のオプトアウトの手続きを極力簡素化するものの、顧客が情報共有を拒否することを認めることを提言した。併せて、弊害防止措置として、顧客情報管理、利益相反管理、優越的地位の濫用防止の実効的な確保を図ることを提言した。

今後、市場制度WGの提言を踏まえて詳細な制度が整備されることになるが、市場制度WGで出た意見も踏まえ、顧客保護の観点から次のような措置を手当てすべきだろう。

まず、顧客である事業法人が情報共有を拒否する方法として、利便性の観点から、電子メール等での通知を認め、グループ企業の場合はトップに位置する持株会社がグループ全体を代表して一括して通知することを認めるべきだろう。

次に、顧客情報を共有する場合について、欧米金融機関では個別の案件の遂行に必要な場合に限って共有しているところが多い。我が国でもそれにならい、個別案件の遂行に関係ない、顧客から依頼も受けていないサービスを提案するための顧客情報の共有は制限するべきだろう。

最後に、規制の実効性を確保するため、顧客利益を損なうような行為に対する罰則や処分など(エンフォースメント)を整備すべきだろう。英国では、2020年4月に金融当局が金融機関に対して、一部の金融機関が抱き合わせ販売を行っていることに関して顧客を公正に取扱うよう求めるレターを発出した例があり、我が国でも違反に対する当局の迅速な対応が求められる。

これらの措置を通じて、顧客である事業法人の利益を保護し、資本市場の健全な発展につながるような制度が整備されることを期待したい。

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執筆者紹介
金融調査部
主任研究員 金本 悠希