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フィンテックによる新しい金融サービスが資産形成を促す

2021年05月10日

政策調査部 研究員 佐川 あぐり

個人による資産形成制度の利用があまり進んでいない。要因には、関心の低さや金融知識の不足などがあるが、加えて、口座開設の手続きが面倒なことや、金融商品選択の難しさ、投資に回すお金がないといった経済的な側面など、実際に制度を利用しようと思ってもハードルを感じることが少なくないだろう。金融教育の強化と同時に、それらのハードルを下げるには、近年注目されるフィンテックの技術革新によって生まれた新しい金融サービスの活用が考えられる。

例えば、オンラインで本人確認手続きを行うeKYC(electronic Know Your Customer)の仕組みは、口座開設にかかる時間や手間を大幅に削減するものである。オンラインで口座開設を完結できれば、早期にサービスを利用できるほか、書類不備等の対応の煩わしさも軽減され、メリットは大きいだろう。

また、自動家計簿サービスを利用すれば、日々の支出から、銀行預金の入出金、証券口座で保有する金融資産、住宅ローンなどの負債の状況までを、アプリ一つで管理できる。資産形成のための資金を準備するには、日々の支出管理が大事である。自身のお金の動きの「見える化」は、資産形成を実践しやすくしてくれるはずだ。

スマホと少額の資金で手軽に投資を始められるサービスも誕生している。ロボアド(ロボ・アドバイザー)は、資産状況やリスク性向などの質問に答えるだけで、投資アドバイスを受けられるサービスだ。助言だけでなく、入金後に自動で運用してくれるサービスもあり、金融商品選択などをサポートするツールとして有効である。

各種ポイントを投資信託などに投資できるポイント投資(※1)は、100円程度から利用可能なサービスが多く、その手軽さから、すでに若い世代を中心に利用が広がっている。特に、モノやサービスの購入に対して付与されるポイントは、投資の心理的なハードルを下げる効果も期待できる(※2)。損失回避傾向の強い人々も、リスク資産での投資を始めるきっかけになるのではないか。

金融教育を進める上でも、フィンテックを用いたサービスが役立つだろう。金融知識の習得は大切だが、実践型で身に着ける工夫があると教育効果はより高まる。例えば、大学の講義で、日々の支出をアプリで確認したり、100円程度のポイント投資を体験したりすれば、資産形成を自分事として意識する学生が増えるだろう。さらなる技術革新により誕生する新しい金融サービスが、人々の資産形成の実践を後押ししていくことを期待したい。

(※2)人は、お金の価値そのものは変わらないとしても、労働の対価として得る所得と、くじで当たったなどの思いがけない所得では、後者の方が気楽に使える傾向があるという(「ハウスマネー効果」筒井義郎、佐々木俊一郎、山根承子、グレッグ・マルデワ(2017)『行動経済学入門』東洋経済新報社、2017)。日常生活の中で得る「ポイント」は臨時的な所得と認識されるため、投資用の資金として利用されやすいと思われる。

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