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新型コロナウイルス後を見据えた行動を

2020年04月22日

経済調査部 主任研究員 溝端 幹雄

中国など一部の国で新型コロナウイルスの影響は弱まりつつあるとの報道もあるが、国内外では未だに感染者の拡大が続いており、それが終息するまでには相当の時間がかかるものと思われる。新型コロナウイルスに有効なワクチンの開発や集団免疫の形成には年単位の時間がかかるとの声も聞かれ、またハーバード大学の研究者らの分析によると、今回の新型コロナウイルスが落ち着きをみせるには、現在のような社会的距離をとる措置を2022年まで続ける必要があるだろうと予想している(※1)。

こうした影響は、2020年4月9日に発表された日本銀行「さくらレポート」の内容にも表れている。これまで地域経済の大きな柱の一つであった訪日外国人客の減少や今回の外出自粛等で、地域のサービス消費が大きな影響を受けている。一方で、従来の省力化投資や5G(第5世代移動通信システム)対応もあって、今のところ一部の生産についてはそれほど悲観的な様子はみられない。

今回の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、日本でもこれまで取り組みの遅れていたテレワークなど、経済・社会全体でICTの利活用が急速に進むことが見込まれる。実際、足元(2020年4月10~12日に調査)の数字では全国平均でテレワーク実施率は27.9%となっており、水準はまだ低いものの、この1か月間で13%ポイント以上も急上昇しているとの調査がある(※2)。新型コロナウイルスの影響が長期化する可能性を考えると、日本でもICTを積極的に取り入れた経済・社会へ変革せざるを得ないだろう。

しかしこれは、これまでの経済・社会でICTにそぐわない慣習・制度を変えることを意味する。その最も大きな影響を受けそうなのは、日本型雇用慣行だ。職務が曖昧で対面によるすり合わせの比重が大きかった従来の仕事のやり方は見直されて、各自の職務範囲を明確にする方向へ次第に変わらざるを得ないだろう。プロセスよりも目に見える成果に評価基準が置かれるようになり、さらに対面重視であった会議もウェブ会議や、会議自体の簡略化といった方向へ転換していくものと思われる。そして、テレワークが当たり前になると、女性や在宅で介護や療養をする人々の就労が一層進むなど、多様な就労形態を推し進めることにもつながる。

その一方で、逆説的だが、対面で進めるべき仕事にはどのようなものが向いているのかを気づくことにもなりそうだ。如何に同僚との何気ない会話などから新しい発想を得ることが多かったか、そうした視点から出社の意味を再考する機会につながるかもしれない。

今回の新型コロナウイルスは、その他の様々な面で、日本の経済・社会に大きな変革をもたらす可能性が高いと思われる。そして、長い目で見ると日本の生産性を高める好機だったと評価されるかもしれない。持久戦に耐えた後に到来する新しい経済・社会の姿を想定して、今のうちにプロアクティブに、先を見据えて、行動しておくことが重要だ。

(※1)Kissler, S. M., C. Tedijanto, E. Goldstein, Y. H. Grad, and M. Lipsitch[2020], “Projecting the transmission dynamics of SARS-CoV-2 through the postpandemic period,” Science, 14 Apr 2020.

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