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注目される地方銀行のベトナム事業戦略

2020年03月10日

金融調査部 主任研究員 中村 昌宏

日本国内での収益環境が厳しいため、ベトナムに駐在員事務所等の機能を有する地方銀行の中には、その必要性を見直すところも多いのではないだろうか。

地方銀行の中で、ベトナムに駐在員事務所等の拠点を持つ銀行は多い。やや古い数字になるが、2018年12月時点で駐在員事務所を開設している地方銀行は5行(※1)、国際協力銀行を通じてベトナムの地場銀行(ベトコム銀行またはベトナム投資開発銀行)と中堅・中小企業の現地進出支援体制の整備のための覚書を締結しているのが約50行(※2)、この他、国際協力銀行を通さずに、直接、地方銀行が現地の地場銀行と同様の覚書を締結しているケースもある。

地方銀行がベトナムに拠点を持つのは、融資先など顧客企業のベトナム進出が増えたためである。しかし、これらの動きが、地方銀行の収益機会の創出に必ずしもつながっているとは言えない。地方銀行は、子会社設立当初の円建て資金は提供できるものの、現地通貨建ての資金を直接提供する手段が限られるためである。現地での資金提供は、大手邦銀の海外拠点や地場銀行が担っており、地方銀行のベトナム事業の多くは、駐在員事務所や提携先の現地銀行を通じた無償での情報提供が主となっている。特に駐在員事務所では、組織の形態上、営業活動ができないため、コンサルティング・サービスは提供できない。

提携先の地場銀行に「ジャパンデスク」が設けられるケースもあるが、十分機能しているとは言い難い。例えば、地方銀行が提携先の地場銀行に行員を派遣して新しい融資先となる日系企業を紹介し、当該地場銀行が日本企業への現地情報の提供や進出サポートを担うケースがある。しかし、地場銀行の担当者が税務や労務の法令や規準改訂に詳しくないことが多い等、両者がwin-winの関係が構築できているとは言い難い。

このような中で注目されるのが、ベトナムでのフィービジネスの創出を狙ったコンサルティング現地法人の展開である。大垣共立銀行は2017年4月にベトナム北部のハノイに現地法人を設立し、2020年3月2日には南部のホーチミンに支社を開設した。また、東京きらぼしフィナンシャルグループは、2019年10月にホーチミンに現地法人を設立した。

ASEANの中では比較的人口が多く、また賃金水準が低いベトナムでは、中国からの生産拠点シフトの動きもあり、日本企業の進出数は増えている。特に、近年は中小企業の進出が多い模様である。中小企業の場合、多くは駐在員として現地に派遣できる人数が限られる。このため、中小企業向けのコンサルティング(会社設立手続き、事業ライセンス取得、労務・税務・財務・法務などの問題解決)の潜在需要は大きい。

地方銀行が海外で収益機会を本格的に創出できるかを判断する上で、ベトナムでのコンサルティング・サービス事業の動向は注目されよう。

(※1)ベトナム国家銀行ウェブサイトより

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中村 昌宏

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