1. トップ
  2. レポート・コラム
  3. コラム
  4. 2020年を迎えるに当たって

2020年を迎えるに当たって

2019年12月27日

調査本部 専務取締役 調査本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸

「光陰矢の如し」

あと数日で2019年が終わり、新たな1年が始まろうとしている。

2020年を迎えるに当たり、日本経済再生の要諦について考えてみたい。

アベノミクスが日本をデフレの瀬戸際から救い、景気を着実な回復軌道に乗せたことは間違いない。今後は30~50年程度先の未来を見据えて、持続可能な経済成長の基盤を強化することに、より一層注力してほしい。

筆者は、中長期的にわが国が目指すべき「国家像」において、以下の五つがキーワードになると考えている。

第一のキーワードは「社会の安定性」だ。具体的には、格差や健康などの問題が限定的で、人々が共存共栄の思想を背景に協力・協働する、安心・安全な社会を維持したい。

第二に「個人の自立」。個々人が自己責任に基づいて自立する、活力ある社会が理想である。

上記の二つが、いわば「縦串」であるとすれば、これらを貫く「横串」として、さらに三つのキーワードを挙げたい。第三に「多様性(ダイバーシティ)」、第四に「持続可能性(サステナビリティ)」、第五に「スピード」——これら三つは、まさしく世界的な潮流ともいえる。

日本の歴史・文化・伝統をひもとくと、わが国は総じてこれらの五つの要素をバランス良く兼ね備えてきた。したがって、わが国がこれから行うべきことは、日本の歴史・文化・伝統に照らして目指すべき国家像を提示した上で、今後想定されるグローバルな環境変化などを踏まえて、これからも守るべき美点と、変えるべき問題点とをきめ細かく峻別(しゅんべつ)する作業にほかならない。

上記の五つのキーワードに照らすと、わが国が優先的に取り組むべき政策課題は以下の通りだ。

第一に、「社会の安定性」という観点からは、社会の中核をなす分厚い中間層を支える必要がある。この意味で、2019年の骨太方針に明記された「就職氷河期世代の支援策」は的を射た政策だ。リカレント教育を中心とする教育投資の拡充にも積極的に取り組むべきであろう。

第二に、「個人の自立」という観点からは、アベノミクスの「第三の矢」である成長戦略の加速が欠かせない。具体的には、規制改革の断行、輸出の振興、労働市場の流動性向上、中小企業のM&A促進などを通じた、労働生産性の改善が鍵になる。

第三に、「多様性(ダイバーシティ)」という観点からは、従来以上に、外国人労働力の活用や女性の活躍を推進して、イノベーション(技術革新)を促進する必要がある。「オールジャパン」という旧来型の発想から脱却し、世界中の優れた企業と是々非々で提携する「オープンイノベーション」を促進することも重要だ。

第四に、「持続可能性(サステナビリティ)」という観点からは、さまざまな分野での政策課題がある。財政面では、社会保障制度改革などを通じて、国民の将来不安の解消に努めねばならない。また、わが国は、自国の歴史・文化・伝統などに照らして「SDGs大国」になる意思を、世界中に宣言するべきだ。金融政策の面では、急速な円高を回避するために2%という物価目標を掲げつつも、「物価が1%上がればそれでОKとして『出口戦略』を検討する」という、いわゆる「ОKルール」の導入も、将来的な検討課題となる。

第五に、「スピード」という観点からは、「無謬(むびゅう)性」へのこだわりを捨て、より一層スピーディーに政策を実行する必要があるだろう。

「保守(Conservative)」の語源を調べてみると、「防腐剤」という意味合いもある。不断の改革を図ることこそが、大切な美点を守り抜くことを可能にする。2020年、安倍政権には、自由闊達な議論を通じて、日本の未来について長期的、多面的、そして根本的に考察した上で、わが国が進むべき道筋を国民に提示してほしい。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

熊谷 亮丸

執筆者紹介
調査本部
専務取締役 調査本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸