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「インパクト引受」?:保険会社のソルベンシー規制とESG

2019年12月24日

金融調査部 主任研究員 鈴木 利光

ひと月ほど前の話になるが、2019年11月26日の日本経済新聞に、「損保、石炭発電に見切り 米欧各社、『ESG』で引き受け停止 広がる閉鎖・建設中止」というタイトルの記事が掲載された。

同記事によると、ここ2年ほど、欧米保険大手による石炭関連企業の保険引受対応が厳格化している。中には、引き受けそのものを停止している損害保険会社もあるという。

こうした厳格化の背景には、同記事にあるとおり、保険会社が引き受けにあたってESG(Environment, Social, Governance)を考慮するようになった、という事情があると考えるのが自然だろう。

金融制度にまつわる規制動向を調査する立場からは、欧州連合(EU)において、記事のような動きを後押ししている可能性のある動きに思い当たる。

それは、欧州保険・年金監督当局(EIOPA: European Insurance and Occupational Pensions Authority)が2019年に公表した二つの報告書である。

一つは、5月に公表された、“EIOPA’s Technical Advice on the integration of sustainability risks and factors in the delegated acts under Solvency II and IDD”(以下、「技術的助言」)である。

いま一つは、9月に公表された、“Opinion on Sustainability within Solvency II”(以下、「オピニオン」)である。

いずれも、EIOPAが欧州委員会のリクエストを受けて公表したものであり、欧州委員会は、これらの報告書を踏まえ、ルール改正の方向性を検討することとなっている。

「技術的助言」は保険会社のソルベンシー規制のうち「第二の柱」(監督当局による検証)において、「オピニオン」は同規制のうち「第一の柱」(定量的資本要件)において、それぞれサステナビリティ・リスクを統合する旨提言している。

とりわけ、冒頭の記事の内容との関連性があると考えられるのが、「オピニオン」で提唱されている、“impact underwriting”という概念である。

この“impact underwriting”という概念には、「引き受けの方針(strategy)や判断(decision)に際してESGへの考慮を統合すること」や、「気候変動リスクに対処する保険商品を開発すること」が含まれる。

これを無理やり日本語にするとすれば、「インパクト投資」(impact investing)ならぬ、「インパクト引受」だろうか。

冒頭の記事のような動向は、まさしく、こうした「インパクト引受」の一環と言えよう。

ソルベンシー規制は、保険会社が「一年」というタイムホライズンにおいて直面するリスクを反映することを前提としている。しかし、サステナビリティ・リスクの統合は、10年単位の長期的な視野に立って初めて意味を成すものといえる。

そこで、「オピニオン」は、「第一の柱」(定量的資本要件)でサステナビリティ・リスク(とりわけ気候変動リスク)を捕捉するにあたって、「一年」というタイムホライズンは維持しつつも、シナリオ分析やストレステストといった補完的措置を併用することを提案している。

こうした提案が、今後、どのような形でソルベンシー規制のルール改正に影響するのか、現時点では定かではない。

もっとも、今後、欧米に限らず、日本の保険会社にあっても、こうした提案に先回りするような形で、「インパクト引受」がスタンダードになっていく可能性は大いにあるだろう。

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執筆者紹介
金融調査部
主任研究員 鈴木 利光