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IMF見通しに見る日本経済の底堅さと先行きのリスク

2019年10月30日

経済調査部 シニアエコノミスト 橋本 政彦

IMFが10月に改訂した世界経済見通しでは、2019年の世界経済成長率は+3.0%とされ、リーマン・ショックによって世界経済が大きく落ち込んだ2009年以降で最も低い成長が見込まれている。2019年の成長率見通しの引き下げは5回連続であり、米中貿易摩擦などによる世界貿易の停滞によって、世界の主要国・地域が広く減速するとIMFは指摘している。

だが一方、日本経済の見通しの数字に注目すると、2019年の成長率見通しは+0.9%と、2018年の+0.8%からわずかながら成長率が高まる見通しとなっている。成長率自体は決して高くはないものの、先進国、新興国問わず、大半の地域において成長率の鈍化が見込まれる中、日本経済は意外にも底堅い姿が予想されている。予測の修正幅に注目しても、世界経済全体の成長率は1年前の2018年10月時点の予測から▲0.7%pt(+3.7%→+3.0%)、先進国は▲0.4%pt(+2.1%→+1.7%)、それぞれ下方修正されたのに対し、日本は1年前から変わっていない。

日本経済の2019年見通しが底堅い理由としてまず考えられるのは、2019年前半の日本経済が想定以上に好調だったことだろう。2019年1-3月期、4-6月期はいずれも輸出が前期から減少したものの、2019年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.2%、4-6月期は同+1.3%と、0%台後半とみられる潜在成長率を上回った。

加えて、世界的に見れば日本の貿易依存度が必ずしも高くないことが、経済見通しの相対的な堅調さに繋がっているとみられる。財輸出額の名目GDPに対する割合を確認すると、日本は2017年時点で14.4%と、貿易依存度が高いアジア新興国などに比べて低く、世界全体の22.1%も下回っている。このためIMFが想定する世界貿易の縮小が、日本のGDPに与える影響も比較的小さなものにとどまっていると考えられる。他方、貿易依存度が高いアジア新興国やドイツなどでは、2018年から2019年にかけての経済成長率の低下度合いや、見通しの下方修正幅が総じて大きい傾向にある。

ただし、日本は貿易依存度が高くない一方で、製造業への依存度が国際的に高い点には注意が必要であろう。製造業への依存度が高いほど、輸出の減少はタイムラグを伴って設備投資や雇用など、内需へ波及しやすいからだ。IMFの見通しでは、2020年には多くの国・地域で成長率が持ち直す見通しである一方、日本の成長率見通しは+0.5%と、2019年から低下することが見込まれているが、これは貿易摩擦がタイムラグを伴って内需を下押しすることが想定されている可能性がある。引き続き貿易摩擦に警戒が必要であるという状況については、日本も決して例外ではない。

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