CCPA成立から見る個人情報保護の意識の高まりと利活用への道

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2019年10月23日

私たちは日々、インターネットで検索をし、ECサイトで商品を購入し、ポイント取得のために会員登録を行っている。こうした行動情報や入力したプロフィール情報が、実際にどのように利用されているのか、意識している人はほとんどいないのではないだろうか。

個人が自分の情報を把握できないほど情報化が進んだことに伴い、世界的に個人情報の保護を強化する潮流が見られるようになった。厳しい規定、重い課徴金を特徴とするEUのGDPR(一般データ保護規則)が2018年から適用され話題になったが、2019年10月には、米国のカリフォルニア州で「消費者プライバシー法(CCPA)」が成立した。

CCPAでは、自分のデータに関する開示請求権、消去権、オプトアウト権等が保障されており、権利を行使した者に対して、サービス等で差別をすることが禁止されている。規制対象は、年間総売上が2,500万ドル以上などの条件を満たし、カリフォルニア州で事業を行い、カリフォルニア州住民の情報を扱う法人等とされている。施行時期は2020年1月1日であり、規制対象となる日本企業は対応を迫られることとなる。

米国には、包括的な個人情報保護法制は存在しないため、今回のCCPA成立により、個人情報保護に関する法整備が進むのではないかと期待されている。このように、世界的に個人情報保護が強化されている中、わが国でも個人情報保護法が2020年に改正される予定である(※1)。中間整理(※2)では、個人データの利用停止権といった個人の情報に対する権利を強化する等の方向性が示された。

このような個人の権限強化等については、十分に注意を払い、キャッチアップしていくことを心がけることが重要となる。一方で、こうした法制を遵守しつつ個人情報を個人のコントロールの下で活用するという「情報銀行」についても、事業者等の関心が高まっている(※3)。

2019年10月には、「情報信託機能の認定に係る指針ver2.0」が公表され、情報銀行の認定制度が見直された。事業者においても、既に20社近くが、情報銀行事業に着手する、実証実験を行うといったプレスリリースを行っている(※4)。事業者の中には、今後何年間かで数十億円規模の情報銀行事業を計画する企業もある。

情報銀行の仕組みが浸透すれば、いずれ、個人が、企業が保有する自分の情報を、主体的に積極的に活用して便益を得ることが当たり前の社会が実現するかもしれない。そのような社会においては、個人情報の利活用によるイノベーションが期待される。

(※2)個人情報保護委員会「個人情報保護法 いわゆる3年ごとの見直しに係る検討の中間整理」

(※4)筆者調べ。2019年10月18日時点。

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藤野 大輝
執筆者紹介

金融調査部

研究員 藤野 大輝