地方創生で見落としがちな「時間格差」の問題
2019年01月10日
2019年は日本人にとって「休み」が大きなテーマとなりそうだ。今年の正月は4日が金曜日であったため、有給休暇を取り長期の連休にした人も多かったのではないだろうか。また、5月1日には新天皇即位に伴って、今年のゴールデンウィークは10連休が実現する。さらに、働き方・休み方改革により4月からは有給休暇の取得義務化も実施される。これまで仕事を優先してきた日本人にとって、「休み」をどのように使うのかは、自らのライフスタイルを考え直す良い機会でもある。
よく言われているように、日本の有給休暇取得率は諸外国よりもかなり低く、会社から与えられる有給休暇の付与日数自体も少ない(※1)。もちろん、諸外国と比べて、日本は祝日や振替休日がかなり多くなっている。しかしそれだけでは、本来取得すべき休暇の一部しか補えないため、日本で休暇を増やすにはやはり有給休暇取得率の引き上げが必要になるだろう。
さらに重要な点は、仮に有給休暇が取れたとしても、その休みを何に使うのかということだ。データで見ると、有業者の休日の使い方には男女差が見られ、特に女性は休みが増えると家事労働が増える傾向にあり、特に地方においてそれが顕著になりやすい。男性は趣味などの選択的な時間が増えるが、女性は家事などの義務的な時間が増えやすく、地域別では男女共に都市の方が比較的自由な時間が多い傾向にある。
地方創生の問題は、地方で生活する個人のライフスタイルに大きく関係すると考えれば、地域間の所得格差の縮小という視点に加えて、地域間で異なる時間の使い方、いわゆる「時間格差」も念頭に置かねばならないのではないか。もちろん、地域ごとに人々の時間に対する考え方が異なっており、全ての時間格差が是正されるべきではないかもしれない。しかし、特に地方で働く女性の家事などの負担を軽減していく、そうした環境・土壌を作っていくということも、「休み」が重視される時代において地方に人を惹きつけるには大事な視点になると思う。
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- 執筆者紹介
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経済調査部
主任研究員 溝端 幹雄
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