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仮想通貨ビジネスの課題

2018年06月18日

ニューヨークリサーチセンター 研究員(NY駐在) 矢作 大祐

足元、国内で企業による仮想通貨の発行や取引所の開設など、仮想通貨ビジネスへの参入を表明する企業が増えている。こうした仮想通貨ビジネスの盛り上がりをどのように解釈すればよいだろうか。我が国の仮想通貨ビジネスの動向を整理する上で、仮想通貨をどのように認識すべきか、という問いに立ち返る必要がある。そもそも仮想通貨には裏づけ資産がない。ただし、名前にもあるように、決済機能を担う「通貨」として認識することは可能であり、この場合価格変動は大きくないほうが使い勝手が良い(※1)。現状の仮想通貨の価格変動の大きさを基に評価すれば、「通貨」としては使いにくく、むしろ投資対象「資産」として認識する方がしっくりくるだろう(※2)。仮想通貨の価格変動の大きさは、投機家にとって魅力の源泉ともいえる。

こうした仮想通貨を「通貨」と認識するか、「資産」と認識するかという違いによって、仮想通貨ビジネスの課題が浮き彫りとなる。例えば、IT企業等が、価格変動の小さい新たな仮想通貨を発行し、決済手段として活用しようとする動きは、「通貨」としての仮想通貨に着目している。eコマースやSNS、メッセンジャーアプリを提供するIT企業は、仮想通貨を用いてサービスの購入から決済までをオンライン上で提供することによって顧客利便性を高め、顧客を囲い込むという狙いがあると考えられる。仮想通貨は、法定通貨への交換が可能であるとともに、送金手段として上限額が設定されていないといった点で、銀行以外の企業が参入可能な既存の決済ビジネス(前払式支払手段発行業や資金移動業が提供する送金サービス)に比べて自由度が高い。こうした仮想通貨の自由度の高さを活かしつつ、トータルサービスで収益化できる決済サービスの提供をいかに進めていくかが、仮想通貨ビジネスを成功させる上でのカギとなろう。

他方で、金融機関等は仮想通貨同士あるいは法定通貨間の交換を仲介するサービスへの参入を模索している。これはFXなど投資対象となる金融商品のラインナップの拡充という観点から仮想通貨の導入を進めているものであり、「資産」として仮想通貨を捉える動きと言える。既存金融機関が参入することで、コンプライアンス状況の改善や手数料の引き下げ等がもたらされ、より安全且つ安価に仮想通貨取引が可能になるかもしれない。ただし、仮想通貨を「資産」として捉える場合、「通貨」としての役割を期待しにくい以上、決済機能とは異なる何らかの存在価値を示す必要がある。もし仮想通貨が何らかの価値を示さなければ、仮想通貨への期待が剥落した際に誰かが損をする「ババ抜き」ゲーム化してしまうだろう。仮想通貨交換業への参入を目指す企業は、仮想通貨の「資産」としての有用性を示す必要があると言えよう。

(※1)資金決済法上、仮想通貨はモノやサービスの購入などに使用することができ、かつ、そのもの自体の売買も行うことができる、電子的に移転可能な電子情報としての財産的価値と定義されている。
(※2)仮想通貨は、現状において金融商品取引法上の金融商品には該当しない。ただし、ICO(initial coin offering)で発行されるトークンの性質によっては、金融商品取引法の適用対象になる場合がある。

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矢作 大祐

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研究員(NY駐在) 矢作 大祐