待機児童問題が左右する家計の所得
2018年04月10日
2011年以後、家計には消費税増税や「子ども手当」の縮小、社会保険料率の引上げなど、様々な制度変更による負担がのしかかり、実質可処分所得を押し下げてきた。一方で、2014年以後、政府が企業へ賃上げを要請する「官製春闘」が行われたこともあり、賃金は上昇傾向にある。では、賃金の上昇が各種の負担増をカバーできたのだろうか。
現役世帯を代表するケースを5つ設定して試算したところ、2011年から2014年にかけて実質可処分所得は低下したが、その後は上昇に転じていた(図表)。2017年時点では、「④40~44歳4人世帯」を除いては概ね 2011 年と同程度かそれ以上の水準を確保しており、賃金上昇が負担増をカバーできたと言える結果だ(※1)。
実質可処分所得をカバーできたのは、男性の賃金上昇に加え、女性の賃金上昇の効果も大きい。女性は、就業者1人あたりの賃金上昇と、就業率上昇の両面で賃金総額が増加している。特に、25歳~44歳の女性では就業率の上昇分のうち正規雇用によるものが過半で、賃金総額押し上げへの貢献が大きくなっている(※2)。
育児休業の給付率・給付期間の拡充や保育所等の定員増が、女性の正規雇用での就業継続を後押しし、家計の実質可処分所得を支えているのだろう。出産前に正規雇用の職に就いている女性でも、出産や育児を理由に一度退職してしまうとその後の正規雇用での再就職は困難となっている。だが、育児休業や保育所を利用できれば正規雇用のまま就業継続しやすく、就業継続により勤続年数が積み重なれば昇給・昇格も行われやすい。
とはいうものの、希望する者が必ずしも保育所を利用できるわけではなく、待機児童問題は解消していない。個々の世帯にとっては女性(妻)が就業継続できるか否かにより世帯の実質可処分所得が大きく変動するリスクを抱えている。待機児童問題への取組みを加速させ、 安心して就業継続できる環境を整えることが急務であろう。
(※2)年齢別の正規雇用・非正規雇用別の女性就業率の動向については、上記レポートを参照。
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- 執筆者紹介
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金融調査部
主任研究員 是枝 俊悟
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