一筋縄にはいかないシャドーバンキング問題

-金融機関のリスク抑制に向けた取り組み-

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2018年02月13日

  • 経済調査部 研究員 中田 理惠

2017年は中国政府が本格的にシャドーバンキング(影の銀行)問題の改善を試みた一年であった。理財商品、レポ取引といったシャドーバンキングやレバレッジ拡大のテコに使われている金融取引に対する規制が相次いで実施(または実施を予告)された。


理財商品とは銀行が販売する金融商品の一つで、個人投資家、他の銀行を含めた金融機関、機関投資家等が購入しており、集められた資金を運用した利益が購入者に分配される。中国政府がシャドーバンキング問題において重視した課題の一つは、銀行等を中心とした金融機関向けに販売される理財商品の残高削減であった。複数の金融機関が投資する金融機関向けの理財商品で元本割れが発生した場合、損失は複数の金融機関にまたがることになる。貸出においても同様のことは起き得るが、理財商品は銀行が自行で与信をしたくない、あるいは政府の方針で与信ができない企業やプロジェクトに資金を融通する手段ともなっているため、通常の貸出よりもリスクが高いとみなされる。


このような認識のもと、2017年4月に中国銀行業監督管理委員会は「銀行業のリスクコントロール業務に関する指導意見」を発表し、金融機関同士での融資・投資に関する監督強化を行った。


では、当局の取り組みはどの程度効果があったのだろうか。2018年2月2日に発表された「中国銀行業理財市場報告」によると、理財商品全体の残高は2016年末の29.1兆元(GDP比39%)から2017年末で29.5兆元へと微増したものの増加ペースは大きく減速した。こうした中、金融機関向け理財商品の残高は大きく減少した。銀行が自己のバランスシート内の資金で保有する分に加え、証券会社、保険会社が保有する理財商品の残高は2017年初時点の6.7兆元(GDP比9%)から2017年末時点では3.3兆元に減少した。


こうしたリスク管理の強化によって、昨年来、市場金利は大きく上昇している。今後、景気の減速が明らかになれば、当局はリスク管理と金利の過度な上昇の抑制という難しい舵取りを迫られることになるだろう。

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