民法改正、成年(成人)年齢引下げへ
2016年09月07日
今後の民法改正と言えば、継続審議となっている債権法の改正、法務省の法制審議会の部会で審議されている相続法の改正が思い浮かぶが、ここ1ヶ月ほどの間にクローズアップされてきたのが成年年齢の引下げである。金田法務大臣が2016年8月15日の記者会見(※1)で、来年の通常国会に成年年齢の引下げに関する改正法案を提出することも一つの選択肢として考えている旨を述べたのである。
改正内容としては、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることが検討されている。最終的な改正法案は作成中であり、その全貌は必ずしも明らかではない。とはいえ18歳に引き下げられれば、高額の契約を結ぶ場合、現在20歳未満だと親の同意が必要とされるが、18歳、19歳でも親の同意がなくとも契約を結べるようになることが見込まれている。なおその半面、18歳、19歳の者は、未成年者ゆえに取り消せる場合があるとされている未成年者保護の規定の恩恵にあずかれなくなることも見込まれている。このような民法の成年年齢の引下げが行われれば、その影響が及ぶ範囲は極めて広範となることが予想されている。
そこで、9月1日には「民法の成年年齢の引下げの施行方法に関する意見募集」(※2)が開始されている(期限は9月30日まで)。この意見募集は、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることを前提に、その改正の施行方法について意見を求めるものである。具体的には以下の4点になる。
①改正法施行時点で既に18歳、19歳に達している者、およそ200万人が、改正法の施行日に一斉に成年に達するとすることになるが、何か支障があるか。
②改正法の成立後3年程度の周知期間を設ける予定であるが、何か問題があるか。
③施行日として、1月1日、4月1日などの案があるが、いつにしたらよいのか。
④原則として、改正法の施行前には遡及させず、18歳、19歳の者が、改正法施行前に成年に達していたとする取り扱いはしないことを予定しているが、どうか。
今後いろいろな意見、指摘が提出されるのではないかと思われる。参考までに、あまりまとまってはいないが、③の施行日について私見を述べる。施行日は4月1日がよいと思う。
というのも、「学校基本調査-平成28年度(速報)結果の概要-」(※3)を見ると、高等学校等進学率(中学校全卒業者数のうち高等学校等進学者の占める比率)は98.7%となっており、学年単位で考えていくのが分かりやすいと考えるからである。
施行日を4月1日とすれば、その施行の時点で18歳、19歳で一斉に成年となる者の多くは高校を卒業して2年以内の者、また別の見方をすれば、一定の卒業年度以前の者が一斉に成年になるという具合に、大雑把に学年で捉えることができる。これは、一斉に成年となる当人たちにとっても、他の者にとっても分かりやすくて、よいのではないだろうか。
(※1)金田法務大臣の2016年8月15日の記者会見は、以下のウェブサイト参照。
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00805.html
(※2)「民法の成年年齢の引下げの施行方法に関する意見募集」は、以下のウェブサイト参照。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080150&Mode=0
(※3)「学校基本調査-平成28年度(速報)結果の概要-」は、以下のウェブサイト参照。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/kekka/k_detail/1375036.htm
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
- 執筆者紹介
-
堀内 勇世