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AppleのSiri解放とソフトバンクのARM買収、共通点は?

2016年08月09日

去る6月13日、Appleは自ら開催する国際的な開発者向け会議(Worldwide Developers Conference)において、”Siri”を開発者向けに開放すると公表した(※1)。Siriとは音声を介した質問回答アプリケーションであり、同社が提供するスマートフォン/タブレット向けOSである”iOS”に標準搭載されているほか、パソコン向けOSである”Mac OS”でも使用可能である。これまで、Siriは同社の標準搭載アプリケーションのみでしか利用できなかったが、開発者向けに機能が解放されたことで、今後は様々なアプリケーションがSiriを経由して音声入出力に対応可能になるとみられる。

これは、単純にスマートフォンがより便利になるというだけに留まらない。そのことを、インターネットサービスの発展に準えて解釈してみたい。インターネットでは、当初の様々な情報サイトが「ホームページ」として乱立していた時期から、利用者を広く集める「ポータルサイト」の登場を経て、その後は「検索」がサービスの入り口になった。主役が移るたびに、利用者が集まる入り口を提供する事業者(ポータルサイトのYahoo、検索サイトのGoogleなど)に多くのデータと利益がもたらされてきたのは、知られるところだろう。そして、モバイルインターネットの時代になり、Appleは音声入出力インターフェースの提供を介して、検索やアプリケーションよりもさらに「手前」で利用者に触れる機会が得られることになる。このビッグデータや音声解析ノウハウの蓄積こそが、IoT時代におけるサービスの付加価値を、さらに高める材料になると考えたのではないだろうか。

一方、7月18日には、ソフトバンクグループが英ARMを買収すると発表した(※2)。ソフトバンクグループの公表によると、ARMはアプリケーションプロセッサーの設計を請け負うことで急成長した企業であり、モバイルコンピューティングで85%以上、自動車で90%以上のシェアを獲得しているとされる。また、省電力性に優れた同社の設計は今後も様々な機器に採用される見込みであり、モバイルインターネットからIoTという、次のパラダイムシフトを牽引するという。ソフトバンクグループは日本、米国で通信キャリア事業を営むが、通信ネットワークよりもさらに「手前」のIoT機器側で強みを持つARMと組むことで、変化が早く、先が読みにくいIT業界において、いち早くIoTで頭角を現すベンダーやサービスを見極めようという動きに見える。ソフトバンクグループの公表にもあるように、ARMの1,300を超えるパートナー企業とのコミュニティも魅力に映ったかもしれない。

こうして見ると、Appleとソフトバンクグループは、いずれもIoTによる変革の「震源」により近いところにポジションを取り、IoT時代を見通そうとしているように見える。両社が異なるのは、Appleはソフトウェア、ソフトバンクグループはハードウェアの観点でアプローチしているという点であるが、いずれも既に投下した資産(Appleはスマートフォン、ソフトバンクグループは通信ネットワーク)がより新しい価値を生むための戦略ではないかと推察される。いずれにしても、IoT時代は、例えば「日本再興戦略2016」(※3)における「Society5.0」のように、漠然としたイメージは語られるものの、具体的にどのような産業でどのような商品・サービスが提供されるのか、明確なことはまだ誰にもわからないだけに、今後も目が離せない。

(※1)Apple Japan「Apple、iOSとして史上最大のリリースとなるiOS10をプレビュー」(2016年6月13日)
(※2)ソフトバンクグループ株式会社「ARM買収の提案に関する発表情報」(2016年7月18日)
(※3)首相官邸「日本再興戦略2016-第4次産業革命に向けて-」(2016年6月2日)

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