「山の日」創設に思うこと~カレンダー休日数以上に休めない日本人
2015年08月18日
2016年から8月11日が「山の日」(山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する)として祝日になる(※1)。これで日本の祝日数は1日増え、年間16日となる。この祝日と土日を含む「カレンダー休日数」と「年次有給休暇付与数」の合計は、労働者が取得する権利のある年間休暇日数に相当し、10年ぶりにこの休暇日数が増えることになる。一方、労働者が年間を通じて実際に取得した休暇日数の実績値は、「労働者取得休日数」(就業規則等で労働義務がないと定められ、実際に労働しなかった日の総数)と「年次有給休暇取得数」の合計で表される(図表参照)。
カレンダー休日数は、1989年(天皇誕生日)、1996年(海の日)に祝日が追加されたほか、いわゆるハッピーマンデー制度(※2)などによって1990年代後半にかけて緩やかに増加し、その後は横ばい傾向である(※3)。また、年次有給休暇の付与日数は、1990年代前半までに大きく増加した後も緩やかに増加傾向である。労働基準法では、年次有給休暇の最低付与日数は20日(勤務6年6ヶ月以上の場合)とされている。
一方、年間休暇日数の実績値を見ると、1980年代より週休2日制が拡大(例えば銀行は1989年、国家公務員は1992年に導入)したほか、1980年代後半から1990年代前半にかけて年次有給休暇の取得日数が増加したことから、1993-96年には約120日となっており、それ以降はカレンダー休日数とほぼ同数で推移している。
この図表を見て気になる点が二つある。一つは、休暇日数の実績値はカレンダー休日数を上限に伸び悩んでいるように見えることだ。カレンダー休日数以上に休むことに負い目があるのだろうか、祝日の設定が無ければ休みづらいという問題が垣間見える。これは、企業側、労働者側双方の問題と言える。企業側は、カレンダー休日数以上に従業員が休んでも経済活動を継続できるように、従業員数の適切な配分や業務の分担を行い、労働者取得休日数をカレンダー休日数程度に増やす努力が求められる。現状では年次有給休暇を消化しなければ、カレンダー休日数を確保できない。労働者側にも、休暇を取ってもすることが無いなどと言わず、休暇を積極的に計画して楽しんでもらいたい(※4)。
もう一つは、1990年代後半以降では、それ以前と比較して年次有給休暇の取得率が下がっていることだ。これは、年次有給休暇の付与日数は緩やかに増加しているものの、取得日数がそれほど増えていないことに起因する。年次有給休暇の取得日数は1995年の9.5日をピークに低迷しており、2014年は9日である。年次有給休暇の取得率は、1985~99年では常に50%以上であったが、2001年以降に50%を超えた年は無い。
いずれにせよ、年間休暇日数の実績値を増やすことが課題である。次に「空の日」が誕生するのではないかという個人的な願望もあるが、祝日を増やすだけでなく、国と企業には、労働者取得休日数や年次有給休暇取得率を向上させる更なる取り組みにも期待したい。
(※1)国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号、最終改正 平成26年5月30日法律第43号)
(※2)1998、2001年に関連する法律が施行され、成人の日、海の日、敬老の日、体育の日が規定の月曜日に移動した。これによって、当該祝日には直前の土日と合わせて3連休が確保されることとなった。
(※3)祝日が日曜日に当たるときはいわゆる振替休日があるが、土曜日に当たっても振替休日は設定されない。また、祝日と祝日に挟まれた平日は休日(国民の休日)となる。さらに、年間の土日の数は104日が通常だが、元旦が土日に当たるときもしくは閏年で元旦が金曜日に当たるときは105日となり、閏年で元旦が土曜日の場合は106日になる。このように年間のカレンダー休日数は毎年異なっており、例えば2010年代で最も少ないのは2012年の116日、最も多いのは2016年の121日(予定)である。両者は営業日で言えばおよそ1週間(5営業日)異なっている。
(※4)観光地域経営フォーラム・休暇改革推進部会 報告書「『休暇』から『休活』へ ~有給休暇の活用による内需拡大・雇用創出」(2009年9月25日)
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町井 克至
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