子育て世代、教育資金は有効的に確保しよう

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2015年06月30日

筆者の近所の小学生達へ聞いたところによると、今、小学生に人気の習い事は、ピアノ、水泳、英語塾、学習塾、サッカーチーム、バレエ教室、などらしい。大半のこども達が複数の習い事を掛け持ちしており、中には1歳未満から通い始めているというケースもあるようだ。だが、習い事の数が多いほど、始める時期が早いほど、それに伴う支出(教育費)は増えていく。

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](平成26年)」によれば、金融資産の保有目的として、子育て世帯が多い20代から40代が挙げた回答は“こどもの教育資金”が最も多い。教育費は中学、高校、大学と、こどもの進学につれて増えていくものであり、それまでにある程度まとまった資金を準備しておきたいというのが理想だろう。

しかし、現在は、世帯主が20代から40代の子育て世帯において、教育資金の確保が難しい状況になっていると思われる。それを示唆するのが、全国の二人以上の世帯における金融資産(※1)の保有動向である(※2)。1990年代後半以降、20代から40代の世帯で金融資産が減少しており、さらに、金融資産から負債を引いた“純貯蓄”でみると、20代、30代ではマイナスに転じ、40代ではプラス幅が縮小している。この負債の多くは、住宅ローンが占めている。特に、子育て世帯は家族の人数も多く、よりマイホーム志向が高いため住宅ローン返済の負担も大きいだろう。

そのうえ、特に現在30代から40代は、1990年代のバブル崩壊による日本経済停滞の波を大きく受けていると思われる。就職氷河期と呼ばれたのもこの時代である。雇用環境が悪化し、さらに株価の下落による投資環境の悪化で、より資産を安全に保有したいという思いから、積極的な資産形成を行うことができなかった(しなかった)ことも、金融資産を減少させた一因といえるだろう。

平成25年4月から、「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置(※3)」がスタートし、祖父母から子・孫へ、教育資金として上限1,500万円(※4)までを非課税で贈与できることになった。将来を担うこども達の教育資金を確保できる一方で、高齢者世代から若い世代への資産移転が促進される期待も大きい。子育て世代にとって、有効に活用すべき制度といえるだろう。

(※1)預貯金、株式、債券、生命保険などの金融資産の合計。
(※2)総務省「全国消費実態調査」より。二人以上の世帯とは、夫婦のみや、夫婦と子、などの世帯を含む。
(※3)平成25年4月1日から平成31年3月31日までの措置。文部科学省「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」【Q&A】について 7ページ
(※4)学校等以外の者に支払われるもので社会通念上相当と認められるものについては500万円まで(文部科学省「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」【Q&A】について 8ページ)。

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執筆者紹介

政策調査部

研究員 佐川 あぐり