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万博とオリンピック

日本の文化の発信拠点としての2020年東京大会

2015年03月04日

金融調査部 主任研究員 鈴木 文彦

20世紀の万国博覧会は「開発型」、「国威発揚型」と言われていたが、21世紀になって、人類共通の課題の解決策を提示する「理念提唱型」に転換した。そのはじまりは2005年の愛知万博(愛・地球博)にあった。愛知万博は「持続可能な社会の創造」をテーマとし、環境負荷の少ない技術を世界に提唱した。今年開催されるミラノ万博は食糧・エネルギー問題を採りあげている。テーマは"Feeding The Planet, Energy For Life"(地球に食料を、生命にエネルギーを)である。

21世紀はそういう時代なのだろうか、この変容はオリンピックにも見られる。1964年の東京大会もそうであったが、20世紀は多分に国威発揚型であり、開発型のオリンピックであった。大会の開催が準備期間を含めて高度経済成長の起爆剤になりえた時代だ。成熟経済期に入って久しいわが国にとって、開催まであと5年となった二度目の東京大会は開発型でも国威発揚型でもない。21世紀の万博と同様、人類共通の課題にどのような解決策を提示できるかが問われる理念提唱型のオリンピックである。ここで生まれたイノベーションを次の世代に引き継いでいかなければならない。われわれは何を遺せるのか、遺すのか。準備期間を通じてつくり上げるべきはまさにレガシー(遺産)である。

2020年東京大会はどのようなソリューションを世界に提案するのか。世界に先駆けて高齢化社会を迎えるわが国において、成熟経済をよく生きるための技術やノウハウを提供するのがふさわしい。単なるスポーツ祭典としてではなく、高齢化社会をいかに賢く生きるかについて、わが国の生活文化や技術をもって世界人類に示すイベントにしたいものだ。まずはユニバーサルデザインと環境技術のまちづくり。たとえば晴海の島にできる選手村はそれ自体がひとつのモデルケースになり得よう。できるのは都市だけではない。健康寿命を延伸するためにスポーツを身近なものにすること。グローバル化で多様化した社会に適応する仕組み・ルールづくり。コミュニティ精神の涵養なども2020年東京大会のレガシーとなる(※1)

多様化する世界の中で、「和をもって尊しとなす」そして「おもてなし」などの日本の精神性、それを具現化した日本文化もアピールすべきコンテンツである。茶の湯、和食、漆器、日本建築など伝統文化だけでなく、アニメーションなどクールジャパンも発信すべき文化である。既に述べたように、レガシーの精神に変容を遂げたオリンピックは「理念提唱型」の万国博覧会と同様のメッセージ性を持つ。ならばいっそのこと、大会開催にあわせて、主会場の東京ベイゾーンに企業や研究機関、文化団体のパビリオンを誘致するのもよいのではないか。日本初の先端技術だけでなく、わが国の文化、クールジャパンを世界に発信する。オリンピックそれ自体が万国博覧会の「日本館」のようなものだ。2020年東京大会の会場の一画をまるでミニ万博のように作り込むのも面白いだろう。

(※1)筆者のこれまでの提言内容については次のレポートを参照。
拙稿「点から面へ 2020年東京五輪のまちづくり」(大和総研重点テーマレポート、2015年2月18日)
同「2020年東京五輪はどのようなソリューションを世界に提案するのか~2020年問題-成熟社会の産みの苦しみの解決策として」(大和総研重点テーマレポート、2014年4月11日)
同「2020年東京五輪に結実する一体感のレガシー~東日本大震災で始まる10年紀の締めくくりとして」(大和総研コンサルティングインサイト、2014年12月17日)

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鈴木 文彦

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金融調査部
主任研究員 鈴木 文彦