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消費税増税を巡る「2つの俗説」

2014年01月07日

リサーチ本部 副理事長 兼 専務取締役 リサーチ本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸

筆者は、2012年6月に、日本経済新聞出版社から『日経プレミアシリーズ:消費税が日本を救う』という単行本を上梓した。自分が書いた本は、わが子の様にいとおしい存在である。一度書店から消えかかった拙著が、消費税論議の高まりを受け、再度書店で平積みになっているのを見ると、深い感慨を覚える。

2014年4月に、消費税率は5%から8%へと引き上げられる予定である。消費税率引き上げは、1997年4月以来のこととなるが、わが国では、前回(1997年)の消費税増税を巡り「2つの俗説」がまかり通っている。

第一の俗説は、「消費税増税が主因となって景気が腰折れした」というものだ。

1997年4月に、わが国では、橋本内閣の下で消費税率が3%から5%へと引き上げられた。結果的に、日本経済は消費税率引き上げ直後の1997年5月から景気後退局面入りした。わが国のマスコミや世論の間では、消費税率の引き上げを、景気後退の「主犯」と見る向きが少なくない。

しかしながら、前回増税時に日本経済が腰折れした主因は、わが国の金融危機(いわゆる「山一・拓銀ショック」)とアジア通貨危機の2点である。

実際、当時大きく落ち込んだのは「設備投資」と「公共投資」であった。これに対して、消費税率引き上げの影響を直接的に受ける「個人消費」は、1997年4-6月期に駆け込み需要の反動などから大きく減少したものの、7-9月期にはプラスに転じている。消費支出の水準自体を見ても、1997年7-9月期には、駆け込み需要が発生する前の水準を回復しているのである。

この様に考えると、結果論として、1997年の消費税率引き上げは非常にタイミングが悪かったのは事実である。そして、国内での「金融危機」や、「アジア通貨危機」の発生を見通せなかった、当時の日本政府に一定の結果責任があることは否めない。

しかし、巷間、声高に主張されている「消費税を引き上げると日本経済は大変なことになる」という主張には、論理的に大きな飛躍がある様に感じられる。

第二の俗説は「消費税増税を行うと、結果的に税収が減少する」というものだ。

確かに、表面上の数字を見ると、わが国の税収は、1997年度の53.9兆円から、リーマン・ショック直前の2007年度の時点で51.0兆円まで減少している。しかし、この間、いわゆる「小渕減税」や地方への税源移譲などの制度改正の影響で、わが国の税収が8.3兆円減少した事実を見逃してはならない。制度改正の影響を除けば、2007年度の税収は実質的に59.3兆円まで増加していた計算になるのだ。

2015年10月に消費税率を8%から10%に引き上げるか否かを巡り、2014年後半には政策論争が激化することが予想される。我々は情緒的な俗説に惑わされることなく、消費税増税の是非に関して冷静な判断を下す必要があるだろう。

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熊谷 亮丸

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リサーチ本部
副理事長 兼 専務取締役 リサーチ本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸