1. トップ
  2. レポート・コラム
  3. コラム
  4. 子育て準備のためには、結婚は早い方がいい?

子育て準備のためには、結婚は早い方がいい?

2012年12月17日

金融調査部 主任研究員 是枝 俊悟

最近、20代・30代向けに「結婚」を意識したマネー本が人気のようである。花輪陽子氏の『夫婦で年収600万円をめざす!二人で時代を生き抜くお金管理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン、2010年)、岡村聡氏の『「29歳貯金ゼロ! 年収300万! このままで大丈夫か!?」と思ったら読む本』(ダイヤモンド社、2012年)などが例に挙げられる。

これらの本に共通する考え方は、独身でいるよりも結婚した方が「規模のメリット」が働いて1人あたりの基礎的な生活費を抑えられること、この結果として出産前のDINKs(※1)の期間にある程度の資産を蓄えられることなどである。いくつかの条件(※2)が必要ではあるが、大ざっぱに言えば「結婚は金銭面で有利」と言えるのだろう。

ただし、これらの本にも「出産・子育ては金銭面で有利」とは書いていない。出産前後に利用できる社会保障制度などの解説はあるが、それらは出産・子育てにおける家計の負担を軽減するものではあるものの、ゼロにするわけではない。

出産後1年くらいは夫婦の少なくともいずれかが仕事を休む必要が生じる可能性が高いし、その間は収入が大きく落ちる。また、共働きを続けられるとしても、公設の保育所に子どもを預けることができず、高額な保育所等の利用料がかかる可能性も十分にある。子どもの教育費は、子どもが大学に進学する際にピークとなると一般に言われるが、「子育てのために働けない状態となること」の機会費用も含めて考えれば、出産後すぐに子育てのためにかかる費用もかなり高額になるものと言える(※3)

出産の前後で想定以上の出費がかかったり収入減となったりする可能性があることを考えると、出産・子育てに対して不安を持つ夫婦(または結婚前の男女)も多いのではないか。

この不安を解消するためには、低額な利用料でいつでも保育所を利用できるようにしたり、育児休業を取りやすくしたりする法律・予算面の整備が必要とされるが、これらの政策によらず、夫婦(または結婚前の男女)単位でできることもある。

それは、なるべく早くに結婚して、出産前のDINKs期間を長く取り、出産前にある程度の資産を蓄えておくことである。前述の岡村氏の著書では、男性30歳・女性28歳で結婚し、第一子出産までの2年間に年100万円ずつ貯蓄を増やす例が紹介されている。この例は、現在の平均的な結婚・出産年齢を踏まえたものと言える(※4)が、同じ例で結婚時期を3年前倒し(男性27歳・女性25歳で結婚)して出産までの期間を5年間取れば、単純計算で500万円の資産を蓄えることができる。

年100万円を5年間蓄えるという構図は、現在金融庁が要望している「日本版ISA」の恒久化案(年100万円以内の株式・公社債・投資信託などへの投資に対して、5年間利子・配当・譲渡益等を非課税とする案)のスキームにも合致し、要望が実現すれば、出産前の若い夫婦の資産形成を後押しできるかもしれない(※5)

500万円(プラス運用益)の資産を出産前に蓄えることができれば、子どもを預けるための費用が想定以上にかかったり、子育てをするための休職・離職期間がある程度あったとしてもお金に困ることなく子育てをできるのではないだろうか。

かくいう筆者も、もう27歳。筆者も前述の花輪氏とともに『大増税時代を生き抜く共働きラクラク家計術』(朝日新聞出版、2012年)を著し、共働きの税制上の優位性を解説してきた。筆者自身も、「近いうちに」結婚して子育てに向けた準備を始めなければ(※6)

(※1)Double Income No KidS(共働きで子どもがいない世帯)の略である。
(※2)結婚前にそれぞれの親から実質的な支援を受けていないこと(実家に住み低額の生活費負担で済んでいる状態や、仕送りを受け取っている状態ではないこと)などが条件と言えるだろう。
(※3)例えば、手取り年収300万円を稼ぐ者(男女問わず)が出産後1年間育児休業を取った場合、働き続けた場合と比べて手取り年収が300万円減少する。育児休業給付金などを考慮しても手取り年収は半分の150万円程度減少することになる。この「機会費用」は私立大学の初年度学生納付金の平均額(約131万円:文部科学省「私立大学等の平成23年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」より)と同じくらい高額となる。
(※4)厚生労働省「平成23年人口動態統計」による、平均初婚年齢は、夫30.7歳・妻29.0歳、第一子出生時の平均年齢は父32.1歳・母30.1歳である。
(※5)金融庁の日本版ISAの拡充案については鳥毛拓馬「日本版ISA恒久化を要望<訂正版>」(2012年9月19日公表)を参照。
(※6)前述の2冊では、平均的には結婚式の資金は祝儀や親からの援助で概ね賄え、新生活資金・婚約指輪・新婚旅行等の費用として100~150万円程度あれば結婚のための資金は足りると述べている。親からの援助がなかったり、婚約指輪や新婚旅行等の希望内容によっては、結婚資金がもっと必要となる場合もある。社会人になってから結婚資金を蓄える際にも(金融庁要望の)日本版ISAを活用することが考えられる。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

是枝 俊悟

執筆者紹介
金融調査部
主任研究員 是枝 俊悟