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給与所得控除・社会保険料控除の改正で年金国庫負担分を捻出できる

2010年12月03日

金融調査部 主任研究員 是枝 俊悟

2011年度において基礎年金の国庫負担割合1/2を維持するための財源2.5兆円を賄うことが困難なため、年金特別会計の積立金から「借り入れ」または「取り崩し」を行う案が政府内で検討されている(※1)

年金特別会計の積立金は、将来の公的年金支給のために準備されている資金であり、それを取り崩すこと、またはそこから借り入れることは、公的年金制度の持続可能性を危うくする。政府・与党には、早急に基礎年金の国庫負担分について恒久的な財源を確保することが求められる。

これに対しては、消費税率引き上げを行わなければ、2.5兆円の財源を賄うことは不可能であるといわれることがある。しかし、筆者は消費税率の引き上げを行わなくとも、所得税・住民税の社会保険料控除と給与所得控除の改正で2.5兆円の財源を賄うことができると考えている。

給与所得控除と社会保険料控除は、ともに収入が増えれば増えるほど控除額も拡大していくものであり、これらの金額が大きいために、日本は先進諸外国とくらべて給与所得者の収入に占める所得税の課税ベースが小さくなっている。

筆者の案では、給与所得控除を一律100万円とし、社会保険料控除を廃止し、給与所得者1人あたり18万円までの「社会保険料還付つき税額控除」(※2)を導入すれば、約2兆6,000億円の増収となる。仮にこの増収分の一部を3歳未満の子ども手当を月2万円に引き上げるための財源3,000億円に使うとしても、なお約2兆3,000億円が残ることとなり、基礎年金国庫負担分の財源不足額のほとんどを賄うことができる。

年収450万円以上の者には負担増(年収の多い者ほど負担増の額が多い)を求める形になるが、それ以下の収入の者の社会保険料負担が大きく減る形となる。現状未納が多くなっている、いわゆる「非正規社員」など(国民年金・国民健康保険への加入を余儀なくされることが多い)の負担を減らし、年金・医療のセーフティーネットの漏れをなくすことができる。「130万円の壁」がなくなり、女性の就業促進を図ることも可能となる。

政府・与党には、ぜひこの改正案を検討していただきたい。

給与所得者の年収に占める税・社会保険料の合計負担割合(単身世帯)


(※1)12月1日付朝日新聞朝刊9面など
(※2)「社会保険料還付つき税額控除」とは、給与所得者1人あたり18万円の税額控除を与えるもので、所得税から引き切れない場合は住民税から、住民税からも引き切れない場合は社会保険料の還付を受けることができるものである(社会保険料からも引き切れない場合、現金の給付は行わない)。

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是枝 俊悟

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金融調査部
主任研究員 是枝 俊悟