税・社会保険料の課税ベースの国際比較と提言

給与所得控除と社会保険料控除の改正により税収増と格差縮小が可能

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2010年09月30日

サマリー

◆政府・与党は、2011年度以降の税制改正にあたって、所得税の課税ベースの拡大と累進構造の回復を目指している。また、税と社会保険の一体改革が目指されている。

◆所得税と社会保険料の課税ベースを国際比較すると、日本においては社会保険料の課税ベースは先進諸外国よりやや広い一方、所得税の課税ベースが狭い。所得税の課税ベースが狭い主な原因は社会保険料控除と給与所得控除にある。両控除を改正することにより、日本の所得税は累進構造の回復と増収の余地がある。

◆給与所得控除の上限を200万円、社会保険料控除の上限を100万円とすると、年収約800万円以上の給与所得者に負担増を求めることになり、約5,500億円の税収増が見込まれる。給与所得控除を一律100万円とし、社会保険料控除を廃止して給与所得者1人あたり18万円の「社会保険料還付つき税額控除」を導入すると、年収約450万円以上の給与所得者に負担増を求めることになり、約2兆6,000億円の税収増(基礎年金国庫負担分の財源不足額とほぼ同額)と、低所得者の社会保険料負担の軽減を同時に図ることが可能である。

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