サマリー
◆8月21-23日に、米カンザスシティ連邦準備銀行(連銀)主催で米ワイオミング州ジャクソンホールでの金融政策に関するシンポジウム(以下、ジャクソンホール会議)が開催される。ジャクソンホール会議では、各国中央銀行の要人や研究者などが集まり、その時々の金融政策の注目テーマに関して議論される。今回のシンポジウムのテーマは、「転換期の労働市場:人口動態、生産性、マクロ経済政策」だ。移民政策やAIの活用など雇用環境を巡る変化や、それに対応した金融政策等が議論されると想定される。
◆市場参加者のジャクソンホール会議での最大の注目点は、22日に予定されるパウエルFRB議長の講演で、利下げ再開の可能性が示唆されるかだ。CPIが落ち着いて推移する中、7月の雇用統計が弱い結果となったことで、市場における利下げ期待が高まっている。一部の市場参加者からは、大幅利下げや継続的な利下げを求める声もある。
◆パウエル議長は、雇用環境の軟化を受け、7月のFOMC(連邦公開市場委員会)に比べて利下げ再開が近づいたとの見解を示すことが想定される。もっとも、大幅な利下げや継続的な利下げに関しては、インフレ再加速のリスクがあることなどを踏まえ、パウエル議長は消極的な姿勢を示すだろう。市場の期待が裏切られれば、金融環境が引き締まり、金融環境に敏感な需要項目(設備投資、住宅投資、耐久財消費)に下押し圧力がかかり得る点には注意を要する。
◆もう1つの注目点としては、FRBが金融政策を運営する上での基本方針である金融政策枠組みの見直しが挙げられる。コロナ禍前の米国経済(低インフレ・低成長(低失業率)・低金利)を前提とした現在の金融政策運営から、雇用の最大化と物価の安定というFRBのデュアルマンデート(2大目標)からの逸脱に対して、迅速な金融政策運営を可能にするものへと修正することが見込まれる。また、経済の不確実性が高い中で、シナリオ分析の活用といったコミュニケーションの改善も検討されよう。
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