中国ビジネスを成功に導く人材マネジメント

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2010年06月23日

  • マネジメントコンサルティング部 主任コンサルタント 芦田 栄一郎
日本企業が中国ビジネスを成功に導くための鍵は、偏に人材マネジメントにある。すなわち「ヒト」の管理と活用が何よりも重要で、その巧拙が成功・失敗に大きく係ってくる。

ところが、中国における人材マネジメントの成功策として論じられる内容は判を押したように「優秀な人材の獲得」「有能な人材の流出防止策」「成果主義型賃金の導入」「モチベーションアップ」などであり、これらのキーワードは日本企業で論じられている内容の域を出ない。確かにこれら定型的に示される内容も重要なのだが、その論点は図表1に整理したので参照頂くとして、本稿では中国における人材マネジメントを導く本質的な側面を考察したい。

人材マネジメント成功可否の指標は「経営目標の実現」とすべきである。現地において「労働争議も起こらず、よい雰囲気の職場で、個人が不平を言うこともなく働いてくれる」状態だけでは必ずしも成功とはいえない。経営目標を計画的に人事制度に反映させてマネジメントすることが重要である。中国進出の経営目標を現地従業員が理解し、それに基づき行動し、最終的に目標実現につながってこそ、人材マネジメントもうまく機能しているといえる。

以下に中国ビジネスを成功に導くための主要な3つの人材マネジメント策について提示する。

1.企業の強みを活かす教育の徹底
ここで意味する教育は、一般的なスキルにおけるレベルアップを意味するものではない。企業が差別化を図り市場で勝てる分野の教育を徹底的に行うことを意味する。製造業の場合は「世界に通用する品質の高さを追求する教育」を、サービス業では「地域で一番の接客サービスを実践できる教育」を意味する。

2.優秀な中国人幹部の育成と大胆な処遇
現地に根を張った経営を実現するのであれば、中国の文化、習慣、歴史などに精通している中国人幹部を育成することが何よりも重要である。中国人幹部には成果に応じて思い切った処遇を行う。昇級・昇格なども実力に応じて飛び級を設ける施策も必要である。日本の人事制度をそのまま移植する発想では失敗する点を強調しておきたい。

3.時価主義による従業員の処遇
従業員の賃金は、半年や1年といった期間毎の時価主義によって成果を評価し、決済すべきである。ここで、長期間で帳尻が合えばよいという日本企業の発想は通用しない。世界各国からグローバル企業がひしめく中、時価主義にて今の成果を直ちに賃金へ反映させることが企業活力の源泉となる。

人材マネジメント成功の本質
人材マネジメントは賃金配分を管理するだけのものでない。今一度「何を目的とした人材マネジメントなのか」という原点に戻り、人材マネジメントを企業の強みを引き出す経営戦略と位置づけ、中国ビジネス成功と関連付けてみつめなおすことが肝要である。

中国における人材マネジメント

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芦田 栄一郎
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