消費のフラット化

RSS

2007年08月21日

  • 調査本部 常務執行役員 リサーチ担当 鈴木 準
消費者がニーズにあった商品やサービスを適正な価格で購入するためには、世の中にある商品やサービスに関する十分な情報が必要である。この点で、インターネットの普及やポータルサイトのめざましい充実は、家計の消費行動に関する情報の検索コストを大幅に引き下げたと考えられる。

1997年末に1155万人に過ぎなかったインターネット利用人口は、2006年末に8754万人まで増加し、個人利用率は76%に達している。インターネットの利用目的は様々だが、「通信利用動向調査(総務省、2005年)」によると、パソコンでは「商品・サービス・企業・店舗等の情報入手」が用途の第一位である。財にしろ、サービスにしろ、何かを購入する際にはネットで下調べをされる方が増えているのではないだろうか。

IT技術によって、人々は希望の商品を見つけやすくなっており、価格や品質の比較検討を十分行えるようになっていると思われる。そうであるなら、企業は付加価値の低い商品を割高な価格で売りつけることなど、もちろんできない。企業が世界中から最適な調達が可能となってきているように、いわば“消費のフラット化”がごく身近で生じているといえよう。これは経済社会にとって、想像以上に重要な変化ではないか。

「情報通信白書(総務省、2006年)」で示されている調査によれば、商品購入に先立ちインターネットを活用していない人の比較店舗数は平均1.62件であるのに対し、活用した人の比較店舗数は5.75件と3.5倍であるという。消費に際しての情報収集コストが低下し、地理的・時間的な制約が緩和されてきたのは明らかだ。そして、比較店舗数が多いほど情報ミスマッチが解消されて、価格面での満足度が高いことも示されている。

商品や価格の情報ミスマッチが解消されれば、人々はより適正な価格で購入できるようになり、高価であってもニーズに合ったものを購入できるようになる。それは価格の機能を高めることでもあるだろう。そうした需要者側での変化を受け、生産性を高めるべき供給者側は活性化され、競争が活発化する。人々が欲しがるものを作って売るという、当たり前のプロフィットシーキング活動と企業家精神が促されるに違いない。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

鈴木 準
執筆者紹介

調査本部

常務執行役員 リサーチ担当 鈴木 準