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くすぶり続ける米国の住宅ローン問題

2007年08月14日

経済調査部 シニアエコノミスト 近藤 智也

足もと、市場で“サブプライムローン問題”が大きく取り上げられているが、この問題に焦点が当てられるのは今回が初めてではない。最初は今年の2~3月。信用度の低い借り手を対象にした住宅融資であるサブプライムローンの焦付きの増加が、融資を専門的に扱う金融機関の経営に打撃を与えるという、直接的なものだった。ただ、その後、株式市場が回復するにつれて、同問題に対する人々の関心は低くなり、一旦は忘却された。

だが、6月半ば、サブプライムローンを組み込んだ証券化商品に投資をしていた、ヘッジファンドの損失拡大が表面化すると、再び関心を集めるようになった。この二次的な動きがどこまで拡大するかは、対象がヘッジファンドという実態が掴めないものであるだけに、不透明な部分が大きかった(実際、金融市場の混乱のなかで、多額の収益をあげたファンドもあったようだ)。そして、格付け会社が相次いで証券化商品の格付けを引き下げたり、商品の処分売りが拡大したことから、価格は一段と下落し、同様の商品を保有する他の金融機関が、損失の計上を余儀なくされている。

ファンドの閉鎖等といったニュースが突然明らかにされるために、市場の疑心暗鬼は膨張したままである。2002年の企業会計不信の時の如く、“持っていません”宣誓書を提出しないと沈静化しないかもしれない。また、3月と異なり、欧州や豪などの金融機関でも評価損を抱えるケースがみられる。世界的にリスク分散を進めた負の連鎖ともいえよう。複雑な金融商品を回避する動きが強まっているために、リスクに見合うプレミアムが求められ(資金調達コストの上昇や条件の見直し)、市況の悪化を受けてM&AやIPOを延期するという事態も散見される。このように、サブプライムと直接関係ない分野にまで混乱が及んでいる。

先週後半以降、各国の金融当局が潤沢に資金供給を実施しており、一連のパニック的反応は一時的な現象として収束するかもしれない。しかし、住宅ローンの質の悪化という問題はサブプライムにとどまらず、Alt-Aやプライム等、より信用力の高い層でも焦付きが増えている。つまり、3月から6月までの間、本家の米住宅ローン問題は決して消えていたわけではなく、静かにくすぶり続けていたというのが適切だろう。サブプライム向けは全体の1割程度を占めているに過ぎない、経済全体への影響は限定的であるという、春先までの解釈では収まらない可能性が高まっている。また、民主党の有力な大統領候補であるヒラリー・クリントン上院議員が連邦政府の関与した対策案を発表するなど、サブプライム層と低所得者層が重なるために、政治的な問題にもなりつつある。

ただ、実体経済への影響に関していえば、以下のことに留意すべきだろう。2003~05年にかけての住宅ブームの調整が長期化すれば、大量の在庫が存在するだけに、住宅価格の下落率は増幅する。既存の住宅取得者は資産価値の目減りに直面し、住み替えを躊躇するケースも出てこよう。90年代後半以降、米国全体の持家比率は大幅に上昇したが、所得下位40%ではほぼ横ばいで推移し、むしろ、真ん中より上の層で持家取得が進んだ。厄介なことに、住宅資産や株式資産の比重が高い富裕層は個人消費の主な担い手であり、住宅ローンの問題は、成長の足枷になるリスクを依然として抱えている。

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