株主総会の「委任状」

RSS

2007年07月03日

株主総会の「委任状」とは

会社法310条により、株主は代理人によって株主総会で議決権を行使すること(「議決権の代理行使」)ができる。その際、代理人が代理権を証する書面として、通常、会社に提出するのが「委任状」(※1)である。この委任状は、株主総会の日から3ヵ月間、会社の本店に備え置かれ、株主は原則として閲覧等が可能とされている。

株主総会で議決権を代理人に行使してもらう際に作成される委任状は、例えば、「株主A氏が用事で株主総会に出席できないので、知り合いの株主B氏に代理行使をお願いする」などという場合に利用される。しかしながら、最近注目されているのは、「株主Xが他の株主に対して自分に議決権の代理行使を任せてほしいと勧誘する」ような形での、次のような事例である。

1)会社提案の否決を目指して、株主が議決権の代理行使のための委任状を勧誘する事例
2)株主提案権を行使して議案を提出した株主が、自己の提案への賛同を求めて、議決権の代理行使のための委任状を勧誘する事例
なお、株式会社(発行会社)が、議決権の代理行使のための委任状を勧誘する事例も存在する。

委任状勧誘の規制

上場会社で委任状が勧誘される場合には、証券取引法の規制が課せられている。具体的には、現在、次の法令が関係する。

ア)証券取引法194条、205条の2第2号
イ)証券取引法施行令36条の2~37条
ウ)上場株式の議決権の代理行使の勧誘に関する内閣府令そこでは、おおまかに次の事項が定められている。
a)勧誘する者は、上記の内閣府令に基づいた議決権行使の代理行使に関して参考となる書類(「参考書類」)を、勧誘時に提供しなければならない。
b)委任状は、株主総会の目的事項の各項目について、賛否を明示できるようなものでなければならない。
c)委任状等を交付した後、直ちに、委任状等を金融庁長官に提出しなければならない。
d)参考書類に虚偽の記載をした場合などには、30万円以下の罰金が科せられる。
e)勧誘を受けるものが10名未満の場合(勧誘者が発行会社やその役員でないとき)などは、この規制の適用除外となる。

(※1)一定の場合、電磁的方法によることも可能とされている(会社法310条3項)。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。