消費者保護のための法改正と施行
2007年02月25日
今年も消費者保護のために法律が改正され、施行される予定である。
例えば、消費者契約法の改正である。消費者契約法はもともと、総合的な消費者被害の防止・救済策の確立を目指して2001年に施行された法律である。この法律は、消費者が、事業者の不適切な行為により自由な意思決定が妨げられて結んだ契約を事後的に取り消すことなどを認め、消費者の保護を図ろうとした法律である。しかしながら、この方法では、事後的な救済はできても、被害が拡大する前に事業者の不当な勧誘行為などをとめることが困難であった。そこで、消費者全体の利益を守るため、内閣総理大臣が認定した消費者団体(適格消費者団体)に、消費者契約法に違反する事業者の不当な行為に対する差止請求権を認めるという消費者団体訴訟制度を創設する改正が行われ、今年6月7日から施行されることになっている。
また、金融商品関連では、金融商品取引法が今年中に施行される(一説には夏といわれている)。これは証券取引法を母体に改正が図られた法律である。この改正の一つの柱が、利用者保護ルールの徹底と利用者利便の向上である。このため、幅広い金融商品・サービスを対象とした上で、利用者保護のための説明責任等の行為規制を横断的に導入している。なお投資性の強い預金・保険や商品先物取引などについては、銀行法・保険業法や商品取引法などを同時に改正することで対応している。
そして、消費者生活用製品安全法が改正されている。この法律は、製品による一般消費者の生命又は身体に対する危害の発生の防止を図るため、製品の製造及び販売を規制などについて定めた法律であった。しかし、近年のガス瞬間湯沸器事故や家庭用シュレッダー事故などが問題になった際に、その弱点が明らかになった。そこで、製造・輸入事業者に対し、重大製品事故の国への報告を義務づけることや、国は必要に応じて詳細な公表をすることを制度に組み込む改正が行われた。これにより消費者の注意を喚起する一方で、国がすばやい対応がとれるようにした。この改正は、今年6月初旬までに施行される予定である。
以上のように消費者保護規制の強化が図られてきている。しかし、今まで予想しなかったようなことが生じないとはいえない以上、消費者側において今後も用心することは必要であろう。
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堀内 勇世
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