新「会社法」の施行に向けて
2005年12月02日
株式会社の根幹を定める新しい「会社法」が今年(2005年)6月29日に成立し、来年5月には施行される予定となっている。上場会社等の発行会社においても、施行への準備が検討されてきたものと思われる。今まで、少々発行会社を悩ませていたのが、会社法が300余りの事項の詳細の決定を法務省令に委任しているのだが、なかなか法務省令の姿が見えなかったことである。例えば、子会社の範囲、配当などの分配可能額の算出に関する事項が委任されている。しかしながら、法務省令の案も11月29日に公表され、その姿を顕わした。まだ案に対する一般の意見を募集している段階なので、今後、多少は姿を変える可能性はあるだろう。しかし、その大枠は変わらないと思われるので、今後、新「会社法」の施行に向けた準備、検討が進んでいくことだろう。その際、以下のことも注意していただきたい。
新「会社法」は、規制緩和の流れの中で新たに作られた法律である。それゆえ、発行会社の活動の自由度を高める仕組みを目指されて制定された。それゆえ、発行会社もしくはその経営者にとって有利な法律で、株主に不利な法律と考える人がいるかもしれない。しかしその考え方は誤りだと思われる。新「会社法」は、情報の開示などにより株主との意思疎通を図りつつ、株主の同意の下で、発行会社もしくはその経営者の自由を認めたものといえるからである。
例えば、配当の権限を株主総会から取締役会に権限委任することが可能となるが、そのためには株主総会による定款変更が必要となる。また、定款変更後も、その場合の取締役の任期は1年でなければならないので、配当政策への不満などが高まれば、再任されないこともありうる。このように、新「会社法」は、一定のバランスを考慮した上で制定されている。また、実際にも、取締役会で配当できるようになれば四半期配当や臨時配当も行いやすくなると考えられるので、株主や未来の株主である投資家による直接、間接の四半期配当や臨時配当へのプレッシャーが増える可能性がある。その中で、発行会社もしくはその経営者が、企業戦略やコストなどの点から四半期配当や臨時配当を選択しないとなれば、その旨を説明し、株主等に理解してもらうよう行動することが求められる。
このように、発行会社もしくはその経営者においては、株主等との意思疎通を図るため、責任ある選択をし、その趣旨を十分に説明することが欠かせないと言う点にご注意いただきたい。
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堀内 勇世
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