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EAと武道

2005年10月07日

小原 誠

前回のコラムで、ITの様式美は作法として表現するのが適当と述べた。ここで大切なのは、IT作法の形式だけでなく、作法に表象される本質の理解である。ITプロジェクトの本質は、限られた時間とコストの中で最高の品質を成果とし、顧客満足度を向上することにある。この本質を忘れ、IT作法の規律だけに固執すると、形式論に陥ることになる。

最近、エンタープライズ・アーキテクチャ(EA)の導入が盛んであるが、このIT作法の適用でも本質の理解を忘れてはならない。大切なのはEAを適用した成果である。EA成果物の書式がガイドラインに沿っていない、EA研修を受講していないメンバはよろしくない、というような形式だけの議論は注意が必要である。形式論が高じるとガイドラインそのものの論議になる。適用する分析手法が違うので別のガイドラインを規定すべき、電子政府で標準化したガイドラインをそのまま独立行政法人に適用するのは抵抗がある、というような主張を耳にすることになる。かくして、茶道の流派のように、同じようなEAガイドラインが乱立するようになる。

日本人に馴染み深い作法に武道がある。江戸時代後期には、千葉周作の北辰一刀流や、新撰組の天然理心流など、700を超す武道の流派が隆盛を極めた。しかし、同時にこの時代は、戦乱が起きず武士が実戦を経験しない時代でもあった。実戦という本質から離れ、他流試合も禁じられ、武道はしだいに型の美しさを重視するようになったのである。武道を極めると免許皆伝となるが、これは成果に与えられたものではない。

そこで、野武士のような存在が喝采を得るようになる。どこの流派も標榜しないが、実戦には滅法強い。しかし実は武道作法の基礎は身につけている。作法を顕示するのではなく、作法の結果で示すという姿勢である。EAの作法適用でも、このような姿勢がクールではないだろうか。少なくとも池波正太郎の世界ではそうである。

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