戦略的な役員報酬改革

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2005年06月13日

  • マネジメントコンサルティング部 主任コンサルタント 柳澤 大貴

ここ数年「役員の退職慰労金の廃止」という見出しの記事を見かける事が多い。在任年数に比例して安定的に支払われる退職慰労金は、株主の理解が得られないというのがトレンドになりつつある。加えて従業員の退職金・年金制度がポイント式や前払い制度、確定拠出年金と多様化している背景が考えられる。

このような前提を考慮しながら退職慰労金に限定せず、戦略的な役員報酬の体系のあり方についてアプローチを試みたい。役員報酬の水準や体系は投資家からの信頼と支持を獲得し、かつ期待感を抱かせるものでなければなるまい。投資家は投資に対してリスクを負っている。当然望むべきリターンを役員の経営力に期待するはずだ。両者には常に好ましい緊張感が存在してしかるべきである。

「このルールならば役員が一丸となって我々の期待する成果を持続的に出しつづけてくれるだろう」と投資家を唸らせるようなメッセージが必要である。ところが総額を人数で除した役員1人平均の金額が従業員レベルと余り差がない、逆に水準が高い割に減算のルールが働かないようなセーフティーネットが厚すぎる体系では投資家の期待に応えられるか非常に疑問である。

また、役員報酬の水準に魅力が無ければ、優秀な従業員がそこを目指そうというモチベーションも沸いてこない。特に役員賞与については多くの企業が控えめである。しかしこの控えめな姿勢は投資家からは自信のなさと解釈される可能性もある。もちろんコミットした業績が未達成ならゼロであるが、達成時には思い切った金額が提示されなくては役員のモチベーションも高揚しないはずである。私は少なくとも役員賞与(業績連動部分)の上限は固定報酬と同額、つまりベストな結果を残せば固定報酬と役員賞与の比率が1:1程度にするべきであると考えている。投資家や従業員の視点からも魅力的でかつ緊張感のある水準と体系の模索がしばらく続きそうだ。

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柳澤 大貴
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