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家計金融資産のポートフォリオ考

2005年04月19日

調査本部 執行役員 調査本部副本部長 兼 政策調査部長 鈴木 準

2004年末現在、家計部門は1424兆円の金融資産を保有している。負債が385兆円あるが、純ベースでも1000兆円を超える。高齢化すると貯蓄率が低下するといわれるが、資本が減るどころか、これまでも高齢化が進む中で金融資産残高は増加した。そして、預貯金をはじめとする安全資産の比率が非常に高い。だが、1996年度以降、家計の利子は巨額の支払超過が続いている。つまり、資金がうまく活用されてきたとはいえない。

労働力(人口)はそう簡単に増やせないが、それと比べれば所得や貯蓄は工夫次第で増える。家計金融資産残高は増加を続けるだろう。団塊世代が定年退職するなど労働力減少が見込まれる中で、ますます重要となるのが資本の有効的な活用である。資金を、金融資本市場を通じて効率的に配分することによって、経済全体の生産性を高めていかなければならない。

わが国の家計金融資産が、これまで安全資産偏重であったことには事情もある。土地を含む住宅価格が他の資産と比べても異様な右肩上がり(高価)で、不動産の流動性が低い状況では、家計はその面でリスクを引き受けざるを得なかった。また、賃金が後払いとなる年功賃金制の下では、若年期や壮年期にリスク資産運用する余力を持ちにくい。

さらに、リスク資産運用を回避することが合理的でもあった。賃金後払いの終身雇用システム、育児・住宅などライフステージに合わせた各種手当、退職金・確定給付型企業年金の制度は、いずれも自己責任で貯蓄をコントロールする必要性を低くしていた。個々人は、まるで勤め先企業にエクイティ投資するかのように、勤務する企業と一蓮托生となることでリスク資産投資を実はしてきた。

だが、状況は着実に変化している。実物資産を含めた現在の家計資産構成をみると、地価の調整が進んで不動産のウエイトは米国並になりつつある。利点も多い日本的雇用慣行が急激に変化するとは思えないが、徐々に変質することも確かだろう。雇用や賃金・退職金・企業年金のシステムが修正されていけば、勤め先企業だけでなく、より広くエクイティ投資をすることが資産形成上で不可欠になる。

そのための環境整備も進められてきた。株式委託手数料の自由化、株式・株式投信の販売チャネルの多様化、資産運用会社の競争促進といった資産運用サービスの供給体制強化や、より公正で透明な資本市場確立のための法改正、リスク資産運用を促す税制改正、ペイオフ解禁などの制度整備である。家計部門が否応なくリスク資産へ着目する必要性は、傾向的に高まっていくだろう。

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鈴木 準

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